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指を喉に突っ込んで

 仕事中に頭痛がし始めた。心の中では笑っていないのに、表面的に笑わなければならない自分は病んでいる。病んでいる自分は笑わなければならない。20時に職場を出て、駅まで歩いていると気分が悪くなってきた。この通勤路には飽き飽きする。スーパーに寄り、値下げされた恵方巻きと落花生を購入した。レジで会計をするほんの少しの時間でさえ苦痛だった。
 頭痛が酷くなり、胸の辺りが苦しかった。体が異様に重かった。「僕、死ぬのかな」と思いながら、駅までの道を歩いていた。死ぬにしても、路上で倒れるのは寂しかった。せめて家に帰って、猫の天鼓氏に別れの挨拶をし、できたら妻が帰って来てから、「ああ、犬のようだ」とか、「あべし」とか「うわーうわーうわらば」とか、色々なセリフを言ってから死にたい気がした。実際、セリフなんてどうでもよかったが、とにかく帰宅したかった。
 一刻も早く帰りたいと思い、奮発して特急電車に乗った。車掌が回って来て、特急券を確認した。車掌の手の平に嘔吐しそうなほど気分が悪くなっていた。駅に到着すると、立ち上がるのさえ酷く億劫に感じるほど体調が悪化していた。家までの道のりが途方もなく長く感じた。眠くもないのに何度も欠伸が出た。

 家に帰り着くと、滅茶苦茶な脱ぎ方でジーンズを脱ぎ捨てた。ピッタリのサイズのジーンズがもし破れてしまったら、もう他に履くものがない。だが、破けても構わないという風に粗雑に脱ぎ捨てられている。天鼓氏が「ご飯」と言う。ウェットフードを提供しないと「納得できない、くれないならその首に齧りついて、頸動脈を引っ張り出し、コリコリとした感触を楽しんでやる」とでも言いたげに鳴くのだ。僕の体調のことなど考えていない。でも、死ぬ前にご飯だけは食べさせなければならない。ご飯を10秒ほど電子レンジで温め、天鼓氏の好みの温かさにして提供する。天鼓氏は騒ぎ立てたほどには感動のないリアクションで、ホットなウェットフードの匂いを嗅ぎ、ペロペロと食べ始める。僕はそれを確認するとコタツに吸い込まれるように倒れた。それから1時間ほど記憶がない。

 22時を回った辺りで妻が帰宅する。気分が悪い、と伝えると妻は早く休めと言い、風呂の準備をしてくれた。風呂掃除をしてくれている間、僕は立ち上がり、ベッドに向かおうとしていた。歩き始めた瞬間、僕は方向を変え、トイレに入った。白い便器を右手で掴み「ああ、この白い便器は細菌にまみれているだろうな。汚えなあ。しかし、僕は死ぬかもしれない」と思い、しゃがみ込むと同時に黄色い胃液のようなものを吐き出し、涙と鼻水を流していた。喉が胃酸で焼けるようだった。激しく咳き込んでいると、妻が後ろに立ち「吐いた?指を喉に突っ込んで吐かんね。楽になるよ」と言っていた。それ以上吐けそうになかった。
 給料も安いし、プライベートではちょっとしたトラブルが起きるし、頭もハゲてくるし、嘔吐するし、世の中には良いことが一つもないような気がした。そんな気がしたが、風呂の準備をしてくれた妻に感謝し、手を合わせた。ベッドに入り、眠りに落ちるまで吐き気は止まなかった。
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