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逃げられる限界の所まで行くんや

 「つらい、つらいんや」と僕の言葉でない言葉で、もう仕事にはうんざりだ、頭がおかしくなると独り言を溢していると、仕事から帰って来た妻が「辛くない」と僕の弱音を突っ跳ねるように言った。「私は自分で言うのもあれだけど、働き者だと思う」と妻が言った。「僕もや、僕も働き者や」とまた自分の言葉でない言葉で僕は言った。「全然」とまた妻は僕の言葉を否定した。僕はお金にならないところで働き者なのだ、家事をちゃんとやっていると主張した。「当たり前やろ。過剰にアピールすることでもない」と言われた。夜勤明けで帰宅し、寒空の下で、洗濯物を干していると、ふと気がふれそうになる。冬の冷たい太陽の光に反射して白く強く光っているであろう頭皮は誰が見ても禿げているだろう。光が当たっても当たらなくても禿げていることに変わりはないが。何でヘトヘトで帰って来て、まだ働かなければならないんだ、まだ禿げさせるのか、もう飛び降りよう。会社はこの僕に上等なカツラと落ちてきた視力を補うインテリ風のメガネと、賢く見えるジャケットとシャツとズボンと靴を支給してくれるくらいの配慮をすべきだ。色々なことが頭の中でぐるぐると回っていた。頭囲60cmの頭蓋が更に膨張していく。

 宝くじは外れた。昨年末の目論見では、今頃10億円を手に入れており、職場に退職届を提出しているはずだった。当てが外れた。自分のいいようにならないものはすべて詐欺のような気がした。

 14時頃にベッドに入った。僕は寝るんや、眠れる限界のところまで行くんや、と僕でない言葉で思って寝入る。18時前に猫が文句を言いに来た。限界まで眠る僕の夢を打ち砕いた。猫は僕の睡眠を許してくれない。猫は18時になると決まって猫缶を食べる。そういう習慣なのだ。18時に必ず猫缶を食べたいから、僕が眠っているのはあり得ないことだと猫は考えている。猫は自分を中心として、世界が回っていると思っている。僕も自分を中心として世界が回っていると考え、それを疑わない時期もあったが、今では別の中心に巻き込まれながら回るクズみたいな人間だと自覚している。どうしようもない。うわー、と棒読みのような悲鳴を上げた。「お腹空いた?」と猫に訊くと「ぱっ」と言う。「食べる?」と訊くとまた「ぱっ」と返事する。「ご飯」と言うと、ドコドコと走り回る。何かの映画で観たジャン・クロード・ヴァン・ダムのように必死になってベッドから体を起こす。ジャン・クロード・ヴァン・ダムのようにカッコよくなくて、禿げたおっさんが汚く起き上がっているのだろうと自分で思い、自分で傷つく。最近、頭だけブルース・ウィリスに似てる、と妻に言われる。ふらつく体の均衡をやっとのことで保って、壁伝いに歩いた。猫缶を器に移し、レンジで10秒温める。猫はテーブル代わりに使っている爪とぎの前に座り、僕を見上げて待っている。皿を目の前に差し出すと、18時に僕を起こした割には無感動な様子で、ゆっくりと猫缶の匂いを嗅いで、ペロペロと舐め始めた。

 夜、パソコンでピアノの演奏を聴いていたら、もうこれ以上体に力が入らなくなった。
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