沈黙の舞台

 最近よく昔の事を思い出して赤面してしまう。

 小学生の頃、ある舞台を演じることになった。僕はある程度セリフの多い役を与えられた。練習は何度もしていた。セリフを完璧に覚え、練習でも間違えることはなかった。でも、本番の僕のセリフの番になって、1分間ほど沈黙してしまったのだ。それは1分ではなかったかもしれない。10秒とか、もしかすると5分近く黙っていたのかもしれない。とにかく5億年に限りなく近いのではないかというほどの長い沈黙だったと思う。
 なぜ沈黙してしまったのかというと、その時に言うはずだったセリフを少し前の場面で言ってしまったような気がしたからだ。それでも言ってしまえばよかったのに、さっき言ったセリフをまた言うのもおかしなものだと考え込んでしまったのだ。そして小声で他の役を演じている同級生に「さっき言ってしまったかもしれない」というような事を、酷くばつの悪そうな表情で訴えて、結局沈黙の後にそこで言うはずのセリフを言うのだった。当然だ。そのセリフ以外に何を言えばいいというのだ?

 中学2年生になって、所属していた卓球部に当時あの舞台を鑑賞していた後輩が入部してきて、「T先輩、あの時沈黙してましたよね」とニヤニヤして言うのだった。その時僕がどういうリアクションをとったのか覚えていない。笑って誤魔化したのかもしれないし、発狂して真っ赤になり、後輩の首を絞めたかもしれない。ただ、当時のことを蒸し返されたという記憶を今思い出して、さらに恥ずかしさが増すのだった。その後輩は悪いやつではなかった。むしろ、なかなかできた人間で、おそらく母親思いのいいやつで、頭脳明晰、ユーモアのあるエロ野郎だった。ただ、恥ずべきことを蒸し返されたという記憶がそいつを一瞬でクソ野郎にしてしまうのだった(しつこく言うけど、決してクソ野郎ではなく、結構仲がよかった、あえて、そう敢えてクソ野郎設定にしてみたのだ。考えてみたまえ、その後輩は別に何も悪いことは言っていないのだ)。

 僕はそれ(沈黙の舞台)以来、どうも頭の中に除去できないしこりのようなものが出来てしまった。最近、何かにつけて、当時の事を思い出し、どうにかなりそうなのだ。その思い出が、何をやってもうまくいかない性質を生み出しているように勝手に思いこんでいる節がある。考えれば考えるほど頭が狂いそうになる。舞台上の沈黙以来、僕はおかしくなってしまった。いや、どこでおかしくなったのか本当は定かではないのだが、今はそんな気がするだけだ。僕は暇さえあれば言い訳を考えているのだが、今日たまたま思いついた言い訳が『沈黙の舞台』であったのだ。

 本当はこんなことを書こうと思っていたのではない。昼間、何かを書こうと閃いた気がしたが、もう忘れてしまった。
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