夢と現実の狭間の幻の時計

休みのはずの日の勤務は睡眠不足も伴い、気怠かった。職場では朝から軍歌が鳴り響き、古老の出征兵が「うん、いいですね」と頷いていた。

「うん、いいですね」

彼は当時、胸を張って歌っていただろうか。日本の勝利を信じる純粋な少年、天皇陛下の子供たちだったろうか。「うん、いいですね」彼は軍歌を聴きながら、何を浮かべ、浸っていただろうか。その遠い眼差しに、僕は見たことのない昔の風景を空想し、「うん、いいですね」と心の中で呟いた。

暗闇の中で光を見た老人が涙を流した。やっと探し物を見つけられたのだ。ところが、見つけられたのは老人の方で、探していた家族は安堵した。橋の下の暗闇で、老人は独り泣いていた。ただ光求め、泣いていた。

休憩中にうとうとしていると、夢を見た。ファッ!?と目を覚ますと夢などはすぐに忘れてしまって、時計に目を移した。混乱した頭は見たものを誤って捉えることがある。休憩時間がとっくの昔に終わっていると勘違いした頭で控え室を飛び出した。仕事場に戻って、再び時計を見ると、まだ休憩時間は10分余り残っている。夢と現実の狭間の幻の時計に騙されて、脂汗を拭っていると「まだゆっくりしてていいのに」と年上の女性スタッフが優しく声を掛けてきた。

ぼんやり突っ立っていることが多いような気がした。今日は本来休みだから、少しばかりダラダラしてもいいではないか、と甘えた気持ちがあった。だが、タダ働きをしている訳ではない。責任がある。気持ちを切り替えて、僕はタイミングがなくて行きたくても行けないトイレのためにパンパンに膨張し、大爆発しそうな膀胱を極力刺激しないように無駄のない動きで、洗濯物をたたんでいった。
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