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悲しい白ウサギ

 職場でとあるイベントがあった。出し物で簡単な劇をした。僕はウサギに扮し、適当に劇中に立った。この劇は前日にやることが決定し、当日打ち合わせで臨んだ劇だったが、割と盛り上がったらしい。僕は緊張して、視野が狭くなり、周りを見ていなかったから、盛り上がったのかどうかはわからない。僕は行事というものが苦手で、ことに人が多く集まるようなものの中にいると酷く苦しくなってしまうのだ。このイベントについても非協力的で、何もしていなかったので、申し訳なかったけれど、なんとかウサギとして参加することができたのでよかった。

「まあ、このウサギというのはセリフなしでして、練習なしでもいけたんです」

 ウサギの役ということで、僕は昨日100均でウサ耳を購入していた。しかし、すでに職場で用意されていた。それに加え、体を白くするためにレインコートを着た。そして、僕はマスクを装着していたので、かつて話題になったパナ〇ェーブ研〇所を連想したが、先輩の男性スタッフは「原発作業員」と一言言ったのだった。確かにテレビのニュースで流れた原発作業員のようにも見える。彼らは今でも必死で働いているだろう。日本の未来のために。僕はそんなやりきれない宗教家、あるいは原発作業員のように肩を項垂れて、ウサ耳を装着し、舞台に立った。年上の女性スタッフが「カワイイ」と言って、僕のお腹をポンと叩いてきたのにはドキドキしたが、僕は自分自身の挙動についての考察を試みていた。ある一つのモラルについての瞑想、僕は時折そうした物思いに耽るのだ。

「これだけ色々な人がいるのだ、挙動不審な人もいるはずだ。むしろ、いない方が不自然だ」

 この世に挙動不審な人物がまったくいないこと、それは不自然だという考えに至っていた。挙動不審な人物の消去、それは限りなくつまらないことのように思えた。世の中、ふつうに行動できる人ばかりだったら、一体何を楽しみに人間を観察するだろう。あの人は今挙動がおかしい、と感じた時、その人物の心情を想像してみるだろう。しかし、おかしな人間がまったくいない場合、人の心の中を想像してみることなど夢にも思わないだろう。想像力の欠如。想像するから楽しいのであって、想像しないのは味気なく、想像できないことは限りなく悲しい。

 そうした考察を職場で行っていたかは疑問だが、気づくと舞台上から「ウサギさーん」と呼ぶ声がしたので、僕は「ピョン!」と一言言って、舞台に上がった。これが僕の唯一のセリフだった。ウサギが「ピョン」と鳴くかどうかは知らないが、それは北斗の拳で「プチ」と言って岩か何かに潰されて死ぬキャラクターのセリフと同じようなものだと思った。僕は「はーい」と返事をして飛び出すつもりだったが、あるスタッフがウサギなら「ピョン」と言うんだ、と言ったので「ピョン」と言ってみたに過ぎない。しかも、あろうことか舞台上の誰かのセリフと、僕の「ピョン」がかぶってしまい、僕の「ピョン」はかき消されたような気がした。僕はほぼ四足歩行で前かがみになり、不審な表情を隠し、舞台に上がった。僕は極めて不審な人物には違いなく、場が持たなかったが、幸いなことに劇はすぐに終了した。僕以外の人たちは堂々と演技をし、立派にやりとげた劇だった。悲しいウサギは早々と舞台上から降りて、ウサ耳を外していた。
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