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祖父と父。僕。

夕食を彼女と共にした。少しだけ今後のことを話した。食後、それも彼女が帰る間際に、僕は祖父と父の話を聞かせたのである。

生前祖父は脳梗塞によって負った言語障害のために、精一杯振り絞る形でやっと出した掠れた声で「おーい、おーい」と居間から廊下を通り、更に台所の奥に位置する遠く暗い居室から、僕らに向かって、訴えかけるのだった。それも台所に行かなければ聞こえないため、偶然にもそこを通りかかった僕が耳を澄ましてやっと聞き取れるレベルの音声を拾って、訪室したのだった。祖父はウ○コを漏らしていた訳だが、それを自分でどうにかできるほど肉体は元気ではなかった。そもそも元気だったら、漏らすはずがない。確かにその頃、祖父は入退院を繰り返したために、歩行が困難になっていた。要介護認定に関して、僕はその時なんの知識もなく、そういうものが存在することも知らなかったので、どうなっていたかはわからないが、確かに祖父は介護を必要としていた。介護をしていたのは、父と母だった。両親は僕に介護はさせない、と言って自分たちだけで頑張っていた。情けないことだが、この時、僕は父を呼びに行くことしかできなかった。

父は2階で休んでいた。昼間のことだったが、仕事と介護で疲れ果てていたことだろう。起こしてみるが、意識は朦朧としているようだった。

僕「じいちゃんがウンコ漏らした」

父「ん、ん~そうか。すぐ行かないとダメか?」

父は、気持ちは起きようとしているらしいが、一度開けた目は再び閉じようとしていた。祖父は不快な状態で待っている。父は疲労により、なかなか起き上がれない。僕は仕事を辞め、実家に戻っており、ニートで暇だったが、何もできない。

父「少し待ってくれ」

父は起き上がったが、意識がぼんやりしているらしく、座り込んだままだ。僕は祖父のいる薄暗い、便臭の漂う部屋に降りて行き、「もうちょっと待ってて」と言って、祖父を待たせた。僕は祖父の下着を用意するくらいはやろうと思い、押入れを漁った。けれど、下着はいくら探しても見つからなかった。ベッドに座っている祖父は病的に落ち窪んだ、ギョロッとした瞳で僕を見ていた。「ちょっと待ってて」同じセリフを繰り返すことしかできない。

何もできない。情けない。今なら、僕一人で処理できただろうに。嘆いてみても、手遅れだ。

こうした話をしようとしたのだが、「父を呼びに行った」という場面まで話した時、急に僕は笑いが込み上げ、堪えられなくなり、それ以上言葉が出てこなくなってしまった。

「何でハマってると?」

そう言って不思議がる彼女の前で、腹を抱えて、床に額をつけて、笑っていた。口を開こうと努力するが、笑いに歪む口角は言葉の発音を阻害する。しかし、口角の歪みが一気に反転したかのように、気付くと僕は泣いていた。たった今まで大声を上げて笑っていたのに。笑い声は消え、涙が抑えきれずに溢れてきていた。

「もう帰るの?気をつけてね」

そう言って、僕はどうしようもなく泣いていた。

辛い人間が二人いて、僕は何も出来ずにあたふたと、行方だけを追っていた。気の毒なことをした。ずっと、そう思っている。
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