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出口なし

 洗濯物を乾燥機に放り込み、硬貨を投入した。洗濯物を入れた乾燥機が回るのを確認してから、200円、300円と硬貨を追加していく。以前、上下のコイン投入口を間違えて、300円を他人の乾燥機に投下したことがある。僕は300円損したし、下の乾燥機を使っていた人は30分待たされた上に、洗濯物はおそらくパリパリになったことだろう。そんなミスは二度としないように、慎重に。

 30分、乾燥が完了するまでの間、ベンチに座って本を読むことにした。例によって『われらの時代』を取り出して、冒頭から読みだす。ある一説を引き出すために、ゆっくり読まなければならない。とは言え、大江健三郎は、人に素早く読ませるような文章は書いていないから、自然とゆっくりと読むようになる。急げ、しかし、ゆっくりと確実に行うことこそ、最速なのだ、大切なものを見落とすな、と言っているような気がする。30歳にもなって、ゆっくりしていられない、と焦ってみるが、やはり正確に日々をこなしてゆくことが大事なのだろう。焦って慌てふためいていたら、視野が狭くなって、何かを必ず見落とすような気がする。周りは周り、自分は自分で一生懸命やるしかないのだ。

 足元になぜかドングリが一粒落ちている。この一粒は瞬く間に乾燥によって、発芽機能を失ってしまうだろう。それは種子としてでなく、食料としてでなく、ただ、ドングリという虚しい響きを持つ形状のみの存在として、そこに落ちている。なんの機能も果たさず、落ちているだけ。無意味に思える。意味があるとしたら、そのドングリは僕にある感銘を与えただけに過ぎない。そのドングリの存在価値を認めているのは僕であって、ドングリは悲しい。きっと悲しい。ドングリの気持ちなんか、これっぽっちもわからないけれど。

 気が付くと、日が暮れていた。外は真っ暗だ。街灯の明かりが一つ寂しく見える。その向うの道路を時折、自動車が通ってゆく。それぞれの車に運転手がいて、ほかにも乗っている人がいるかもしれない。そして、その人たちそれぞれに生活があり、悩みがあるだろう。自分のことだけで、いっぱいいっぱいだろう。

 室内には、乾燥機のカラカラという音とクリスマスソング。今年も残り少なくなってきている、と僕は思う。ついこの前、2013年、平成25年を迎えた気がしたけれど、それも数秒のうちに通り過ぎてゆくようだ。立ち止まることなんてできない。どこまでも止まることなく、あの深淵へと向かっている。やがて年越し新年。

 ガラスに室内の様子が映し出されている。乾燥機がぐるぐると回っている。さきほど入って来た中年もしくは前期高年期の男性が独語を言い、ガラスにもその姿が映し出されている。もちろん、読書をする自分の姿も映っている。自分だけ酷く不出来なもののように映って見える。不確実。不明瞭。反社会的な思想が僕を正直に映しているのだろうか。そうだ、反社会的。社会にどうも馴染めない性質の僕。

 ここはどこだろう。時折、自分がどこにいるのかわからなくなる。
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