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 その日の15時半過ぎに職場に向かって歩いていた。いつもより体が重い気がした。今日が夜勤だなんて信じられない気分だった。しかし、何度シフトを確認しても夜勤に変わりなかった。職場に行けば、もしかすると変更されているかもしれない。ひとまず出勤してみるしかなかった。職場に行くと上司がやってきて「君、今日は夜勤でなく休みのはずだよ」と言ってくれるはずだった。しかし、上司は一向にやって来ない。彼は休みだったから来るはずがないのだ。僕は自分が夜勤で出勤していること、上司が僕に夜勤ではないと告げに来てくれないことに愕然としていた。勤務開始と同時に始まる申し送りをぼんやりと聞き過ごしていた。何も頭に入って来ない。訳のわからない事を言ってやがる。はっきりと言ってくれ、僕は夜勤ではないと。

 申し送りが終わって、持ち場についてもまだ自分が夜勤であることを俄かには信じ難い心境であった。時間が流れ、自分が夜勤の仕事を黙々とこなしていることに気づいてもまだ信じられない。いや、信じたくないのだ。とにかく、休憩まで頑張ろう。2時間の仮眠の間に僕は呼吸を整え、瞑想して心と体の調子を回復させることができる。2時間あればできる。

 0時半になり、僕はあと30分ほどで休憩に行けるのだと思い、それから仕事そっちのけで時計を眺めるという作業に入った。時計は思った以上に進んでくれない。時間と言うものはスムーズに流れてはいないのだ。一見滑らかに川の流れのように進む時間も、実は時に大げさに歩を早めるし、殺したくなるほどゆっくりとなり立ち止まることさえあるのだ。そう、殺意を抱くほどゆっくりと。
 やっと15分経ったところだった。内線が鳴った。それは業務多忙を告げるものだったが僕はしばらく何を言っているのかわからなかった。理解できたことは僕の休憩がお預けになったということだけだった。僕は自分が夜勤であることが信じられないう上に休憩すらとれないかもしれないということがまた信じられなかった。一体これはどういうことだ。

 結果としてなんとか1時間の休憩は確保することができた。僕は休憩中に1年ほど前から心と体のために始めたプロテインを摂取し、ビタミン剤を飲み込んだ。残念なことに仮眠と言えるものはなかった。瞑想を試みた。声が聞こえた。「嘘だ、嘘だ、嘘だ!」それは自分の声だった。気が付くと業務に戻っていた。見飽きるほど見てきた職場の風景がどこか違って見える。まるで嘘のようだった。そうだ、これは全部嘘なんだ。これはCGか何かだ。映像だ。何を見せるんだ、やめろ!

 夜勤を終えて家に帰っても僕が夜勤をしてきたなんて信じられなかった。そして、これからも夜勤をしなければならないという事実を信じたくなかった。嘘だ。すべて嘘なんだ。僕は現実逃避に終始した。
 昼になるとベッドに入った。スナイパーのゲームをやった。犯罪者が一般人に紛れて街にいる。そいつらを撃ち殺すのだ。シンプルなゲームだ。犯罪者たちに罰を与えているうちに寝てしまった。犯罪者の多くはスキンヘッドだった。一体誰が罪を犯し、誰が罰を受けているというのだ。ふざけるな。

 目覚めてみると17時前だった。サイレンと同時に猫がメシを要求する。酷く怠かった。頭も少し痛い気がした。気分が悪い。猫にメシを与えると、頭がはっきりするまでしばらく時間がかかった。これは夢かもしれない。だが現実だった。痛い現実だ。クソ!と思いながら、僕はゲームで僕によく似たスキンヘッドの男の頭を撃ち抜いて殺した。

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