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新しい空気

 できる限り規則正しい生活を心がけた。朝は洗濯と掃除、昼前か昼過ぎになると食材の買い出しに出かけた。眠気を感じると好きな時間に横になった。夕食を作って、仕事帰りの妻を迎えた。完全に主夫な生活を送っていた。ほぼ毎日、このようなリズムで過ごしていた。

 有給休暇も今日で終わりだ。一ヶ月の長いようで短かった休暇が終わり、明日からまた仕事が始まる。新しい環境、新しい仕事、新しい人々。僕は勇んで現場に飛び込んでいくだろう。決して「あなたはここに何をしにいらしたのですか」と聞かれることはない。ちゃんと契約書を書いて提出をしたのだ。勤務当日になって「採用したなどという話は聞いていない」と言われることはないはずだ。今は不安が大きいが、きっと仕事に慣れるだろう。朝礼で、首から上、顔だけでなく、紙の薄くなった頭頂部までをも真っ赤にして、僕は自己紹介をするだろう。今から緊張してきた。頑張る!



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タイムライン

 完全に僕のせいだった。悪いことをしたと思ったが遅かった。

 14時46分にサイレンが鳴り響いていた。もう夕方になってしまったのか、と一瞬思ったがすぐに今日という日について思い当たることがあって納得した。そして手を合わせた。
 15時を回ったところだった。通路が騒がしかった。隣室の子供たちがドタバタと出てきたらしい。どこかへ遊びに行くのだろう。夜勤に備えて休んでいた時にはその喧騒に苛立ったものだ。この長期休暇でずっと座って過ごしていたために尻が痛くなってしまった僕はベッドに横になっていた。本を閉じて、スマホで動画を観ていた。地震関連の動画を観た。
 関連動画を次々に見ていく。ある動画でテレビの緊急地震速報が鳴る場面があった。相変わらずマンションの通路では子供が騒いでいた。

 天鼓が通路の方を見ながら目を丸くしていた。「ボー」と唸っていた。よくあることだ。通路に人の気配を感じると唸るし、インターホンが鳴ると他人がやってくることがわかっているので唸って怖がる。初めは子供の気配に怯えているのかと思った。
 しかし、天鼓は僕が見ていた動画で緊急地震速報が鳴ったので怯えてしまったのだった。
 熊本の震災の際、僕の住んでいるマンションも大きく揺れた。緊急地震速報が鳴った直後だった。天鼓はあまりの振動に失禁してしまった。その時のこと、緊急地震速報の警報音は忘れずにいたのだ。

 天鼓はコタツに入って、夜まで出てこなかった。「ボー」と唸っていた。心の傷というものはなかなか癒えるものではない。

 自分でもわかっていたが、「ハゲが悪い」と妻にも言われ、更に反省した。天鼓には何度も詫びたが、いくら大丈夫と言っても猫にはわからない。こういう時は落ち着くまで待つしかなかった。夜になってやっと落ち着き、コタツから出てきた。



 妻と『タイムライン』という映画を観ていた。現代人が中世に行って、じいさんを連れて戻ってくるという話だ(どんな話だよ)。映画を観ていると21時を回っていることに気づいた。最近、22時頃には就寝している。しっかり睡眠をとることを心がけているのだ(と言いながら今日は0時を回ってしまった)。映画の途中で僕は風呂に入った。風呂から出ると映画は終わっていた。「どうなった?」と妻に聞くと「女の人を助けた人が中世に残った」と大雑把な説明をされた。妻は目の前で録画リストから『タイムライン』を消去した。「なんで消すと?」と泣きそうになって問うと「だって観たもん」と言われた。「僕は観てない」と伝えると「観るの?」と言われた。いつもこうだ。でも、これが天鼓にしてしまった罪に対する罰だと思って受け入れよう(随分軽い罰だが)。

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理想的な生活

 何をするか考えたところ、仕事をしている時には最も難しい事をこの長期休暇で実行することにした。それは規則正しい生活を送ることだ。必ず0時前には寝て、朝は9時までには起床する。介護の仕事をしていると勤務時間が変則的で、規則正しい生活などできなかった。4月から仕事が始まると、また不規則な生活が始まる。僕は規則的な生活をしたかったので、この休みに思う存分、規則正しい生活を送ることにした。夜更かしなんて絶対にしない。と言いつつ、もう0時も迫っているので、物足りなさはあるが、ここで終わりにして寝ることにする。

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長期休暇

 年次有給休暇消化中である。退職を申し出た後、有給休暇の残り日数をすべて消化したい旨を上司に伝えると、かなり渋られた。内心「ふざけんじゃねえ、無理なことがあるか。寄越せ!」と思いながら、丁寧な言葉で「有給休暇の取得は無理なはずがありません」と言い続けた。月の半分を有給にするから前半だけでも出勤してくれと言われたが、妥協しなかった。「3月はすべて有給休暇にしてください」の一点張りだった。何を言われても目を真ん丸にして、相手の言うことになど耳を貸すつもりはなかった。少し揉めたが、どうにかすべての日数を消化できるようにシフトを組んでもらった。

 有給休暇ということで、3月は勤務がない。長期休暇に何をするか考えたところ、一人で旅でもしようかと思った。妻に「一人旅でもしようかな」とぼそっと言ってみたら、「いいけど、夜までには帰って来てね。ご飯を作ってもらうから。あと掃除と洗濯もよろしく」と言われた。これでは旅行どころではない。
 そもそも長い休みがあっても、お金がない。旅行に行くお金はどこにもないし、行きたいところも特に思い浮かばない。月の後半に実家に帰る予定を立てたくらいだ。
 今の職場が副業OKなので、日雇いの仕事でもして小遣い稼ぎでもしようかと思ったが、せっかくまとまった自由な時間を手に入れたのだから、働いてストレスを溜め込むなんて勿体無い気がした。たとえお金を稼いでも。おそらく、また転職するか、定年退職するまでは、これほどの長期休暇はないだろう。わざわざ働かなくてもいい。働いたら負けだ。

 この休みは妻の言う通り、掃除や食事作りなどの家事をして過ごそうと思っている。お金がないので、少額で作れる料理を考えながら、のんびり過ごすつもりだ。つまらない人にはつまらないかもしれないが、安価で料理のレシピを考えるのもなかなか面白いことだと思う。生活するための戦略なのだ。
 あとは読書をしたり、散歩をしたり、ヘブライ語の勉強をしたりして(何のためだよ)、とにかくのんびりと過ごそうと思っている。

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たびびと

Author:たびびと
こんにちは、たびびとです。
ようこそ、ぼくのブログへ。

介護職員のバイトをしています。
時間がいっぱいあるので、ブログ始めてみました!

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