クソ野郎の肖像

 室温30℃。蒸している。汗が流れ落ちる。だが冷房はつけていない。まだ体調が万全とは言えないのだ。昨日、暑いからと言って冷たいものを食べたり、飲んだりし過ぎたせいで、夕暮れには内臓痛に悩まされた。胃腸の丈夫な体になりたい。何よりも健康が一番だ。お金は星の数よりも多く欲しいが、やはり健康が欲しい。元気がなければ何もできないのだ。



 もっとカッコよく描けばいいものを。描いた自分でそう思う。だが、僕の目にはこう映ったのだ。洒落にならないくらい捻くれた性格をしていそうな自分自身を。そのまま筆を動かした。筆は嘘をつかないのかもしれない。

 あなたは絵を描く時の心躍る気持ちをお忘れではありませんか?18色のパステルを目の前にして、僕はその色彩の前でドキドキしていた。さて、何を描こうか。鏡を持ってきた。そして、このまるで色彩に欠けた、性格の悪い、見るからにモテないような表情の、たるみ緩んだ皮膚をした、およそ30代とは思えぬ風貌の老けた調子の男を描いたのだった。

 線と言うのはあくまで人工物だ。自然の中に線は存在しない。僕は自然に反して、線を使って描いた。それ以外の描き方を知らないのだ。小学校の図工の先生も、中学校の美術の先生も、高校の美術の画家先生も、詳しくは教えてくれなかった。というより、不真面目に授業を受けていたから、ちゃんと教えてくれていたのに、聞き逃していたのかもしれない。とにかく、絵とはどうやって描くのか知らない。僕が線で絵を描くのはおそらくドラゴンボールの影響だろう。

 それにしても、自画像なのだから、もっとイケメンに描けなかったのか。髪の量を嘘でもいいから増やして、二重顎をとりやめて、輪郭をはっきりとさせ、きりっとした眉に、鼻筋の通った綺麗な鼻、外国人のように彫りの深い凛々しい顔にしたらよかったのだ(もはや別人じゃねえか)。



 これは妻が描いた僕の肖像。妻でさえ、ちょっとカッコよく描いてくれている。

 なぜ、絵を描いたのか。それは今読んでいる『ゴッホの手紙』の影響だ。僕はすぐに影響を受ける。ドラクエをやっている時は、将来「旅人」になりたいと思い描いた。小説を読みはじめたら小説を書き始めた。ボディビルのもっとも権威のある大会ミスターオリンピアの覇者であったロニーコールマンがレッグプレスで1トン上げた動画に影響されて、動かなくなるまでスクワットをしたら筋を痛め、正座ができなくなった。友人の影響で広告収入を得ようと思い、ブログを始めた(ちなみに一度たりとも広告収入を得られていない・・・)。結局、すべて中途半端で投げ出している訳だ。中身が空っぽのクソ野郎じゃないか。

 何も身に付かないのだが、やはり絵を描くのは楽しかった。いや、楽しいと思いながら描いていた訳ではない。ただ夢中になっていたのだ。最近何かに夢中になった事なんてなかった気がする。

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三重津海軍所跡



 佐賀県にある三重津海軍所跡は今年、明治日本の産業革命遺産の一つとして、世界文化遺産に登録されたということである。

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 佐野常民記念館からの展望。

 海軍所跡ということで、当時の建物などは残っていない。隣接する佐野常民記念館でVRscopeというものを借りて来て(無料で楽しめる)、当時の海軍所の様子を見たり、説明を聞くことができる。訪れた人たちのほとんどがVRscopeを持っていた。それが何か気付くまでは「全員同じカメラで撮影している」と思っていた。はっきり言って、このVRscopeがなければ、何もわからない。
 たとえば今年同じく世界文化遺産に登録された『明治日本の産業革命遺産』の構成遺産である端島炭鉱(軍艦島)は、説明を受けずとも、見た目だけでも楽しめる。魅力的な廃墟からは当時の生活を思い浮かべずにはいられない。海上を船で渡るという楽しさもある。しかし、三重津海軍所跡には当時の建設物等は残っていないため、風景のみで当時の様子を思い浮かべることは難しい。何も知らずにそこに立たされても、おそらくちょっとした公園という印象だけで済んでしまうだろう。まずは歴史を知る事。ある程度の知識がなければ、楽しめない。軍艦島にしても何にしても、知識を身に付けたら、もっと面白くなるはずだ。

 失礼かもしれないが、説明なしに蒸し暑い中、三重津海軍所跡を歩いていても全く面白くない。遺跡を探検するという意味合いにおいては全く面白みもない。これはおそらくほとんどの人が思うはずだ。しかし、明治の歴史や動きについて学べば、この何もないような跡地のど真ん中で「面白え!」と大笑いするはずだ。

 先日、福岡市博物館で『山本作兵衛の世界』というものを見てきたのだが、その際初めて音声ガイダンスというものを利用した(有料で楽しめた)。絵画というものは多くの情報を一瞬で目から取り入れることができるので、一瞬で楽しむことができるのだが、その作品が描かれた経緯(歴史的背景や作者の気持ち)などは元々知識がなければ推測する以外にはないのだ。知識がなくても、その場で説明を聞くことができると、面白さも違ってくる。何かの展示会に行く事前準備として望ましいのは、それについての知識を身に付けておくことであるが、途方もない時間がかかってしまう。
 山本作兵衛の絵には説明文が一緒に書かれているから、読むとわかるかもしれないが、すべての作品の文字をいちいちよんでいたら厖大な時間がかかってしまう。音声ガイダンスで「炭券(炭鉱札)」の説明を受けた。炭券というのは炭坑夫たちが賃金の代わりにわたされる通貨で、炭鉱内だけで通用するものだったようだ。これで米などと交換するのだが、米一升が実は9合しかない。文句を言うと交換してもらえないので、泣く泣く交換する。炭券は炭鉱内、指定された店以外で使えないから、現金にするために両替が必要なのだが、両替の手数料が高かったという。こうした説明を聞いて妻が「カイジやね」と感想を述べた。こういう風に、音声ガイダンスを聞くだけで、楽しみ方も違ってくる(どういう風にだよ)。

 途中から三重津海軍所跡の話題から逸れてしまった。世界文化遺産に登録されたということ、割と近いということで、この度行ってみたのだった。夏休みに突入したこともあり、人で溢れていると思ったが、あまり多くの人はいなかった。もしかすると穴場かもしれない。

 帰りに通りかかった店でご飯を食べた。全体的にまずかったが、とくに焼き肉が鋼のように硬くて、噛み切れず、何百回と噛んだ後に丸のみするしかなかった。苦情が出てもおかしくないほどの肉だった。今時あんなに硬い肉が食える店もないと思う。一体なんの肉だったのだろう。

 これは昨日のことで、夜勤明けで行ったので疲れてしまった。帰宅後20時頃から床で寝てしまい、23時にはベッドで本気で寝だした。今日は早起きして(5時には目が覚めると思っていた)、活動的な1日になるだろうと予想していたが、起きたのは9時頃だったし、昼過ぎには耐えられない眠気が襲ってきて、16時近くまで寝ていた。今日一日一体何をしていたのだろう。しかし、軍艦島とか山本作兵衛だとか鋼の肉だとかの話になって、一体本題は何なのだ?

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怠け者には台風が来ない

 台風で電車は止まるだろう。多少寝坊しても構わない。9時までに起きたらいいのだ。9時前に布団の中から職場に連絡して、電車が止まっているので遅れる旨を伝えたらいいのだ。それからゆっくりと仕度し、昼近くになって風雨の中を歩いて行けばよいのだ。僕は台風の到来をむしろ期待して、わざと寝坊し、電車遅延を利用した正当な遅刻を画策していたのだった。ところが昨夜の気象予報を確認して「これでは電車は止まらない・・・」と自ら企てた愚かな計画が、企てて数分も経たないうちに潰えたことを悟った。

「クソ!うまくいけば昼まで眠ることができたかもしれない!」と一人で不謹慎な叫び声を上げていたら、妻が「そういう時に限って台風は逸れるもの」と怠け者に対する教訓めいた言葉を投げかけてきた。彼女は以前勤めていた会社で僕と同じように台風に乗じて寝坊することを既に企てただけでなく、実行していた。本当に昼まで寝ていると、会社から「どうした?」と電話がかかって来たのだと言う。台風の進路は予想に反し、大きく逸れ、どこかへ行ってしまった。台風直撃かと思われたその日、社員全員が普通に出勤しており、もはや言い訳のできない状況で、彼女は素直に「寝てました」と一言だけ言って会社に向かったという。怠けようとしてうまく行くことなどないのだ。

 しかし今朝は雨風が強かった。それだけでなく7月というのが信じられないくらい寒かった。僕は身震いしながら歩いた。電車の遅れはたったの3分程度だった。電車遅延で遅刻を正当化し、さらに遅延証明書により遅刻を無効化するためにはある程度の運転見合わせが必要なのだ。徐行などの遅延3分ではいつも通りの電車に乗っても、出勤時間に間に合ってしまう。とにかく怠けたかった僕はどうにか遅刻しても、働いたことにできるようにするための方法を見つけ出そうと思ったが、どう考えても無理だった。電車はちゃんと動いているのだから。動いているのに動いていないと言う事はできない。僕はいつも通りの電車に乗って、いつもより3分ほど遅く職場に着いただけだった。

 遅刻した分の労働が免除されることを念頭に動いていたので(予定では3時間の運転見合わせ=3時間の労働免除、遅延証明さえあれば働いたことになるのだ。その間一体誰が働いているんだよ)、きっちり本来の労働をこなして酷く疲れてしまった。勤務中にもう眠くて辛くなってきた。帰りの電車では半分眠っていたし、帰宅後もぼんやりしている。

 この辺りで止めておく。寝る。

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沼津ホテルに行こう

 末多とまともに話したのは、下宿していた学生寮の僕と体面に位置する部屋に住んでいた耶麻田が死んだのではないかという疑いをきっかけとした。僕が部屋を出ると末多が耶麻田の部屋の前に立っていた。
 「耶麻田君、最近見ないね」と僕が声を掛けると「まさか死んでないよね」と末多が穏やかでないことを言った。2、3日ほど耶麻田は姿を見せなくなっていた。末多は入寮後、耶麻田とゲームをするなどして親しくしていた。趣味が似通っており、話しが合ったので意気投合したのだった。親友になるかもしれない耶麻田が突然姿を消したことで少なからず動揺していたのだろう。まともと言えるかは怪しいが、これが僕たちの最初の印象的な会話だった。

 寮のおばちゃんに事情を説明し、僕たちは合鍵を使って耶麻田の部屋を開けた。家具調度品はそのままに耶麻田だけが姿を消していた。ガス台には洗われていない鍋、調理後の食物残滓が底にこびりついたまま乾燥したステンレス製の鍋が放置されていた。彼は残滓を置いてけぼりにして、入学後間もなく、まだシラバスと睨めっこすることなく、履修登録も済まないうちに消えてしまった。そして、耶麻田は二度と戻って来なかった。

 おばちゃんが確認をとったところ、耶麻田は生きていて、現在は沼津ホテルに引きこもってしまっているということだった。この出来事をきっかけにして、僕と末多の交友関係が始まった。この友情を築くために耶麻田はスケープゴートの役割を担う形となってしまった気になって心が痛んだ。本来なら、今頃末多と耶麻田は永劫の友情を築いていたのではなかろうかと。
 しかし、耶麻田は一体どうしていなくなってしまったのか。デリカシーに欠けるおばちゃんの話によると「彼はね、ほんの小さなことを気にする性格だったのよ」ということだった。失踪の理由は判然としない。僕には確かめ様がないのだ。とにかく耶麻田は繊細だったのだ。

 僕は入寮後間もない耶麻田から部屋の〈鍵のかけ方〉を教えてもらったことを覚えている。その部屋のドアは鍵を鍵穴に挿すのは開ける時だけで、施錠する際は内側のボタンを押してドアを閉めるタイプのものだった。施錠の方法すらわからない無知な僕だったが、実は鍵のかけ方を聞くことを口実に、耶麻田とコミュニケーションをとり、それをきっかけとし交友関係を深めようと目論んだのだった。しかし、それはただ教えてもらうだけに留まった。会話はすぐに潰えた。僕は話下手だったし、容姿と態度もいけなかったのだろう。坊主頭で金髪、眉毛は抜いて細く整えていた。末多によれば「ガタイがよくて、金髪で見た目は怖かった」ということなのだ。耶麻田は怖がってしまったのではないか。耶麻田の方もそれ以上喋ろうとしなかった。
 入学前の段階で入寮した1年生たちの何らかの集まりがあったのだが、僕と隣りの部屋に入った白河の2人が呼ばれなかった。だから未だに僕の中では「何らかの集まり」であり、彼ら新入生たちの間では顔合わせということになっているのかもしれない。もう今となってはどうだっていい。末多がネタにしてたまに笑っているくらいの話だ。
 人見知りで、ぶっきら棒な態度のせいで、怖い人と思われたのか。もしかすると耶麻田の失踪理由は対面する部屋の住人が”見るからに粗暴そうな男”だったからかもしれない。僕は今でもそれを気にしている。自分の容姿や態度のせいで、一学生の人生を大きく脇道に逸らさせてしまったのではないかと勝手に不安になってみたりするのだ。僕のせいでなければいいのだが、と切に思う。

 耶麻田、彼は今でも沼津ホテルに引きこもっているのだろうか?耶麻田に関しては、あれから時が止まったままのだ。僕らは救出に行くべきだったのだろうか。「耶麻田君、最近見ないね」と僕が声を掛けると「まさか死んでないよね」と末多が穏やかでないことを言った。そして僕は「沼津ホテルに行こう!」と言うべきだったのかもしれない(なんで居場所を知ってるんだよ)。

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うどんの食べ方~一から十まで~

 その通りには少なくとも4軒のうどん屋があった。僕はその4軒すべてに立ち寄ったことがある。どこが一番とは言えないが、今日行ったうどん屋が一番であることも否定できない。
 入口を入るとすぐに券売機がある。僕はボタンに書かれたメニューから、それがどういうものかを想像するのだ。見た目を想像し、匂いを想像する。そして想像上で味わって、もう食べる前からその味を知り尽くしてしまうのだ。目を閉じ、静かに味を想像していると、後から客が来た。僕は慌てて、メニューを決めきれないまま「天ぷら」と「ミニ丼」と書かれたボタンを押す。もっとじっくりと決めたいところだ。いや、おそらくそれ以上想像すると店の入り口で満腹になって引き換えし、店主を激怒させることになっただろう。
 平日の18時頃ということで、店内はまだ空いていた。空いている席に座った。両隣は空席だったが、まもなく左隣りにファミリーが座った。小さな女の子が二人と母親とおばあちゃんと思われる女性たちだ。
 うどんが運ばれてきた。大きな器に黄金色の汁、透明感がありコシのある麺、別に添えられた天ぷらの盛り付け、天ぷらにつけるその辺のスーパーでは手に入らないかもれいない塩、見るからに美味そうだ。美味そうだと思った時にはもう既に食べていて、美味いと思っているのだった。だから実際には「美味そう」などと思っている隙などなかった。それは美味いのだった。

 僕の隣には2歳くらいの女の子。その女の子がずっとこちらを覗っているのだ。妻によると食べ始めてから、食べ終えるまでの間、一時も目を離さず、「一から十まで」僕の食べる姿を凝視していたらしい。僕はずっと左側に視線を感じており、できるだけそちらに顔を向けないように窓の外などを眺めながら食べていた。気になりだすと食べた気がしなかった。気になりだすと味がわからなかった。味がわからなかったが、それは確かに美味かった(なんでだよ)。僕がよほど風変りな食べ方をしていたのだろうか。好奇心旺盛な2才児には、僕の容姿あるいは食べ方が気になって仕方なかったのだろう。僕のうどんの食べ方から、彼女は何かを学び取っただろうか。かつて僕が子供だった時分、他人のものの食べ方に興味を抱いて観察し、ただ一言「ウケる」と訳のわからない感想を残したように。彼女は何を感じ取っただろうか。彼女の感受性は一体何を。

 僕は見習おうと思う。彼女の観察の仕方を。最初から最後までもれなく観察する。その観察の仕方、そして感受性を見習わなければ。観察力、それを鍛えたら、コンビニに入店してきた男性客が一体何の目的で入店したのかを始めの一歩で予測し、的中させるほどになる。動作の一歩で行動を予測し、顔を見ただけでそいつがどういう人間なのかを理解する。僕が見習うべきは、純真無垢な好奇心の塊なのかもしれない。

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サッカー観戦



 夜勤明けだったが、数時間睡眠をとった後にサッカー観戦に出かけた。とはいえ、僕は露店でたこ焼きだったり焼き鳥だったりを買って食べてばかりだった。僕はサポーターではないのだ。何も知らない。けれど、得点した時などはサポーターたちに混じって、盛り上がったものだ。



 右側の赤い服の小さい人たちは8.6秒バズーカーという人たち。ネタを披露しているらしい。



 アビスパ福岡vsギラヴァンツ北九州。僕はアビスパ福岡の応援をしていた。結果4-2で勝利。疫病神である僕が応援したことで、負けるのではないかと内心冷や冷やしていたが勝ってよかった。さすがにサッカー選手たちには僕の負のエネルギーに満ちた重い運気は影響しなかったようだ。いや、2点取られたのは僕のせいか?とにかく勝ってよかった。

 しかし、僕はどうしても勝たねばならぬ勝負に負け続けているのだ。次は僕が勝つ番だ。

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猫探し

 たまに猫を見失って家中探し回ることがある。探し回ると言っても、部屋は広くない。狭い家の中なのになぜ人に悟られないように気配を消すのか。
 首輪の鈴の音が鳴ると所在はすぐにわかるのだが、動きがないとわからない。脱走したのではないかと心配になる。だが大抵は食器棚の上で顔を傾けて、人間を舐め腐ったような、ふざけた顔で主を見下ろしているのだ。僕は間抜けな顔で下向きに「てんちゃん、てんちぃ、てんこちゃーん」と呼びながら探している。猫は間抜けな人間を雑魚だと思って見下すだろう。
 ふと思い立って食器棚の上を見てみるがいない。絶対に入るはずのない猫よりも体積の小さいスペースなんかを探し回った後に「そこか」と食器棚の炊飯器を置く場所の奥のスペースに座っている猫を認めた。



 雨が降っていた。僕は家を出たくなかったが、キャットタワーの上で眠る猫の額を撫でて仕事に向かった。最近通勤時に必ず吐き気がするのだ。僕は感覚的にこれが不安の現れだと思ってみた。職場に着くと、大して暑くもないのに全身汗びっしょりになっていた。

 夜明けはまだだろうか。僕は猫の額の感触を思い出しながら、目が熱くなってきた。

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作品64

 午後3時を過ぎると途端に眠くなってベッドに横になった。気付くと17時になっていた。もう一度今朝の9時に戻してほしい気分だった。僕は目の前に転がっている無限の好機を、無限に逃し続けているような気がしてならないのだ。僕には午後3時の無気力な状態が永年続くのか。うんざりする。しかし、これも自分で選択した結果なのだ。自分なりの冒険の結果。
 そう、僕は自分の人生を冒険的に生きようと試みているのだ。サイコロを振って、丁か半かの賭けをしようというのだ。運が悪いのにも拘わらず。自分の運の悪さを頭脳でカバーしようという友人と違って、怠け者の僕の選んだもっとも気楽な方法なのだ。出目は半々。丁が50%で半が50%だ。勝つか負けるか。何度勝負したか知れないが、今の所自分で持ちかけた賭け事の勝率は0%と言ったところだ。何が丁半50%だ。ふざけんじゃねえぞ、コノヤロー(まさにヤクザな考え方)!

 夕方、気分転換にメンデルスゾーンを聴きながら、”料理”を作っていた。大きくて素晴らしいジャガイモを見つけたので、是非とも食材の味を存分に味わえる料理にしようと思い、腕に縒りをかけて作った。渾身の料理だ。



 これがジャガイモの丸焼きです。

 この画像をmixiに上げて、誇らしげにコメントでも付けようと思ったら、友人がなんとも美味そうな料理をまるで先読みしたかの如く載せていて、僕は今までの勢い、情熱の籠ったヴァイオリン協奏曲ホ単調、作品64第一楽章のような情熱が一目散に我が肉体から逃げ去ってゆき、恥ずかしさで顔が真っ赤になったと思ったら、途端に血の気が引き、また午後3時的な無気力感に襲われ脱力した。僕はmixiを閉じた。マイミクが一人しかいないミクシィ!!!

 結局、友人はこのブログも見ているから、僕の残念な情熱の残骸を眼にすることだろう。ジャガイモの丸焼き!!!素材の味を存分に味わえる作品64!!!

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逝った

 洗濯機の回転する底部に何かが引っかかりガラガラと異音を立てていた。それが何か初めはわからなかった。一時停止し、衣類洗剤の溶け込んだ水の中へと手を突っ込んで、引っ掻き回してみたが、浮遊する洗濯物以外に掴みどころがない。まあいいや、と洗濯機を再び回転させ、異音のことなどすっかり忘れていた。

 洗濯機が停止した。フタを開けるとよじれた洗濯物群の真ん中にポツンとイヤホンが置かれるようにして、停止していた。「しまったー」と叫んで、大急ぎで、あたかも今すぐに見つけたらまだ間に合うとでも言うように洗濯物を引出し、今日の夜勤明けに来ていた半袖のシャツを探りあてた。胸ポケットに入っているはずだった。しかし、胸ポケットからはすでに流れ落ちたらしい。すべての洗濯物を取り出し、洗濯機の底にそれを見出した。そこには正方形に近い形、約3cm四方の物体が無表情に打ち捨てられていた。

「iPodだぁああーーー!!!ううああうああ!」



 シケた。通勤時によく使っていたのに。洗濯した後から、今に至るまで、ずっと「もうダメかなあ・・・」と諦めきれずに呟いては、電源ボタンを押しまくっている。やっぱダメか・・・

 今までありがとう。

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ディソーダ―

 朝から精神力ゲージが限りなく0に近い1ドットのまま通勤電車に乗った。電車内に一時的に排泄物のようなニオイが立ち込めた。やりきれなくなった。全力で叫びたかったが、見えている風景が色彩を失っていった。呼吸が苦しくて、手足がしびれてきた。ああ、まずいと思い、呼吸を一定のリズムで意識的に刻んだ。頭がふわーッとした。すぐに目を閉じて視覚を潰し、余分な力を使わないようにして、ただ呼吸のリズムを整えることだけを考えた。
 電車を降りて、無気力で血色のない無脊椎動物的な感覚で職場までの約10分間の道のりを歩んだ。無脊椎動物的とは一体どういう感覚だよ、という当たり前の問いを発せず、あなたはただ今日の僕の無気力、そして無関心な徒歩を想像してみて下さい。それは単なる週の始めの憂鬱な通勤となんら変わりないものと感じるかもしれない。でも、違うのだ。月曜日のくそったれな鬱的なものよりもさらに世界を真っ白に変えてしまうほど、僕は元気がない。昨日も一昨日もその前もその前も僕は元気がない。原因はよくわからない。何もしてなくても気分が落ち込むのだ。
 駅を出ると高校生たちが列を成して、彼らの学校がある方向へと、早朝の沈黙のさなか、まるで無考えにその青春を当然のものと思っている風に歩んでゆくのだ。その当然の青春はいつしか当たり前に過ぎ去ってゆくのだ。彼らの黒い頭のうち、幾人かは十数年後にはもう一部分的に肌色になって、脂ぎっているだろう。さらに幾人かの表情は変質者的になり、ガラス窓に映る自分の表情に嫌悪するだろう。ガラス窓や鏡から視線を逸らすものの、その変質者的な表情は印象的で、自分自身の顔面にも拘わらずショックを受け、脳裏に焼き付けられ、思わず目を閉じても暗闇に浮かび上がるだろう。俺はいつの間にか最も嫌悪する存在になってしまった!あの青春の胸を焦がすほどの輝きは失われてしまったのだ!これは俺が最も恐れていた喪失体験ではないだろうか!彼はいつ自分が自分の意図しない方向へと転がってしまったのか呆然として後ろを振り返るだろう。い、いつ?

 仕事など手に付かなかった。僕は気持ちの悪い作り笑いで誤魔化して帰って来た。ああ、もう嫌だ。僕はまた通いなれたはずの職場で挙動不審になっているのだ。うろうろと歩き回るのだが、一体何の目的で歩き回っていたのか思い出せない。冷房も効いていないリビングで次第に汗を滲ませた。体から嫌な匂いが立ち上ってくるのを感じ、じりじりとしていた。額から毛髪の薄くなった部分にかけてが余計に脂ぎってくるのを感じた。額の汗や脂を拭っていると、職場の優しい女性スタッフが「暑いですね」と声を掛けてくれたが、僕はまた痴漢のような不審な笑みを浮かべ、「そうですね」と気色の悪い返事をした。一刻も早く引きこもらなければ、人々の視線や、社会的な空気が、恐ろしく強力な紫外線や猛毒の黒カビのように襲ってきて、1分と持たずに死んで白骨化してしまいそうだった。



 僕はただ、こういう風にリラックスして空を見上げたいのだ・・・

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無眠主旋律公園

 巨大な欠けた茶碗に水が満ちている。朝目覚めた時からすぐにその茶碗に浸かっているような感覚だ。全く力が入らない。休みだから何もせずに過ごしてもよかった。クラゲのように脱力した状態で僕は体をなんとか動かして、掃除だとか猫草植えだとか必要な事を済ませた。午前10時にカップ焼きそばとご飯を食べた直後、僕は体調がおかしくなった。なぜカップ焼きそばとご飯という炭水化物のコンボを食べてしまったのだろう。胃の辺りにどろどろとした不快な何かがいつまでも残っている感じだ。益々やる気がなくなった。ベッドに横になるとそのまま寝てしまった。

 午後、妻がバーゲンに行くと言った。僕は行かないと初めは言い張ったが、「車で行く、助手席に乗っていたらいい」というので着いて行くことにした。



 博多駅前には山笠が飾られている。



 バーゲンではタオルハンケチを二つ買った。汗の流れる季節だから、タオルは何枚あっても困らない。食器コーナーで有田焼だったり、唐津焼きだったり、バカラのグラスをじっと眺めた。お香のお店で挙動不審に香の香りを匂ってみたりした。阪急で開催されている夏の関西うまいもん大会で変質者的に歩き回り、試食をしてきた。初めは乗り気ではなかったけれど、これが結構いい気分転換になった。

 でも、なぜこんなに気分が落ち込むのだろう。元気が全然出ないし、やる気がないし、ずっと眠ろうと思えばずっと眠られるほど眠いのだ。生ける屍のごとく、生きたミイラのごとく、僕は虚ろに過ごすだけだ。今頑張ってブログを書いている。明日早いからもう寝よう・・・

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上がれ!頼むから、上がってくれ!

 7月が始まった。相変わらず、僕は自分の脂ぎった変質者的な表情をガラス戸に見ては目を逸らし続けている。先月の鬱々とした日々はやりきれなかった。文章を書くことは割と好きだったのに、それすら苦痛となり果てて、趣味であるブログがすでに趣味と言えないほど手を付けなくなってしまっていた、毎日何事かを綴ろうと思ってはいたのだが。僕自身の血肉は一体どこへ行ってしまったのかと、白骨化してしまった隙間だらけの体を驚愕して眺めまわすのだった(いや、どう間違っても白骨化またはミイラ化なんてする訳がないんすけどね)。

 友人が「君最近ブログを更新していないね。楽しみに待っているよ」と励ましてくれたので、今日はなんとか頑張ろうと思う。

 近況。暑くなってきたので毎日汗を流して働いている。汗をかくから、僕は浮浪者のようなニオイを発している。特に夜勤を終えた時などは酷いものだ。それは妻にも指摘された。どうしようもないのだ。まさか夜勤の最中に堂々とシャワーを浴びる訳にも行くまい。僕は自分がクサいとわかっていながらも、なかなか解決の糸口を見つけられずに悩んでいる。僕がいなくなった瞬間に職場の人々が一斉に「くっせぇえええーーー!!!」と叫んでいるに違いないのだ。もう仕事などに行きたくない(いや、君ね、仕事に来たくないと思っているのは、むしろ職場の人たちだろう)!
 仕事には難を抱えながらも、なんとか休まずに続けている(そう、僕は今の職場になってから一度も休んでいないのだ。というか休めない。ふざけんな)。

 今、読んでいる本は大江健三郎の『個人的な体験』。僕は苦悩し、時に爆笑しながら読んでいる。あなたは小説を読んで、腹を抱えて笑ったことがおありですか?むしろそんなやつを見かけたら変な人だと思うだろう。しかし、これこそ本物だと思う。なぜ、大江健三郎はこんなに面白い文章が書けるのだろう!僕もこんな文章が書きたい!こんな文章が書けたら、きっと小説家になれるだろう!

 しかし、なんとか頑張ろうとしてみたものの、なんだかガス欠気味で、力が湧いてこない。30分という枠を使って、ひたすら気を溜め続けているのに、力が抜けて行くようだ。今日は夜勤明けだし、早く寝よう。明日は元気になれたらいいな。

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プロフィール

たびびと

Author:たびびと
こんにちは、たびびとです。
ようこそ、ぼくのブログへ。

介護職員のバイトをしています。
時間がいっぱいあるので、ブログ始めてみました!

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