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若葉マークをつけようと思う

 約1年ぶりに車を運転した。周りの車の速度が早く見えた。車の流れに乗れない。バックミラーで後方を確認するとトラック運転手が詰めて来ていた。彼らトラック運転手は自動車運転のプロだ。僕の速度と同じ速度でぴったりと後に着く。速度を上げると彼も速度を上げ、速度を下げると彼も速度を下げた。寸分の狂いなく、僕の運転する車との車間距離を保っている。僕は遅いらしい。アクセルを踏み込む。
 あ、黄色だった、あ、黄色だった。僕の右足はアクセルとブレーキの間で狼狽えている。助手席の妻が僕の運転を罵る。なんとか無事目的地に到着する。妻の採点では65点らしい。とにかく判断が遅い。普段運転している人との大きな差だ。ヒヤリハットがない点でまだましだった。

 買い物をした後、荷物を乗せたカートを駐車した車まで押して行った。空になったカートを押して、元の場所へと戻した。駐車場に戻ると車が消えていた。僕は口をパクパクさせて、辺りを確認した。見当たらない。場所を間違えたらしい。走り回って、車を探す。ダウンジャケットを車の中に置いてきてしまったから、次第に寒さが身に浸みた。同じ場所を行ったり来たりして、キョロキョロと見回した。迷子になってしまった。もう一度カート置き場に戻って、車を停めた場所に向かってみよう。僕は走り出す。いや、妻は僕を置いて帰ってしまったのかもしれない。風が冷たかった。ふと後を振り返ると赤い色の車が走っていた。僕は「あっ」と泣きそうになって、赤い車に走り寄る。運転席で妻が顔を真っ赤にして笑っていた。

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進展はないのか

 帰りの電車で何度も膝が崩れ落ちそうになった。やはり夜勤明けは眠い。座席に腰かけると寝過ごしてしまうので、立っているしかない。どうにも辛い。平日の午前中から酷く眠そうにしているなんて、この人は一体何をしているのだろうと思われるかもしれない。でも、そういう生活をしている人だっている。
 帰宅すると11時になっていた。以前は職場まで徒歩3分のところに住んでいたので、早ければ10時前にはもう家にいて、シャワーを浴びていた。近くの弁当屋に行き、かつ丼を注文していた。洗濯を済ませて干し終わっていた。前の家では、それらの作業を終えると11時になっていた。今では帰宅時間が早くても午前11時。
 シャワーを浴び、朝食兼昼食を食べ終え、眠気に耐えきれなくなって13時に眠る。起きてみると18時半になっていた。足元で猫も寝ていた。心地よい眠気に包まれ、意識はぼんやりとしていたが、やがて覚醒へと状態が移行して行った。次第次第に明晰さを取り戻しつつ、体をエビのように丸め、しばらく猫の背を撫でた。すぐに妻が帰宅した。急いで夕食を作る。凝ったものは作れないので、焼きそばを作って食べた。焼きそばを食べながら、今後夜勤が増えることを考えた。それは決定しているらしい。すでに職場で規定された夜勤の限度回数に達しているのに(はっきりとしないが、採用された時夜勤の限度は月7回と言われている)。人手不足というのはこういうことなのだ、と介護業界のやりきれない状況を想った。

 イスラム国に拘束された日本人のニュースがやっていた。進展は見られないらしい。僕は『開運!なんでも鑑定団』の録画予約をした。

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15分間で1ページ頑張ると

 まだ暗いうちに起き、まだ暗いうちに家を出た。駅まで歩いている時、仕事のことを考えて嫌な気持ちになってきたが、極力考えないように自分の足音を聴き、そのリズムに身を投じ、我を忘れようと努めた。駅のホームで何もせずに電車を待った。何かをする気にはなれなかった。あまり考えないように努めたつもりだったけれど、いつの間にか仕事の段取りを考えてしまっていた。電車が来て、乗り込んだ。乗車時間は約15分ほどだ。その15分で本を読んだらいいのだが、読む気にはなれない。半ば放心状態のようにして15分を過ごすのだ。その15分でたとえば本を1ページくらい読めたとする。往復で2ページだ。すると一月に2ページ×出勤日数分の知識を損している計算になる。2ページ×出勤日数20日×12か月で年間480ページも損している。いや、もし乗車時間を読書に充てたとすれば最低でも480ページ分の知識を得られる訳だ。プラトンの『国家』の上巻が読めるじゃねえか。2年頑張れば読破できる。そう考えると非常に勿体ない気がしてくる。それでもなお僕は心ここにあらずといった風に目を丸くし、口をすぼめて、意識を宇宙空間に漂わせている。プラトンの『国家』は本棚で腐っている。ちょっと頑張ってみようかな・・・

 それにしても眠い。朝5時前に起きているから、21時頃にはもう眠くて仕方ない。帰宅後は気が楽になっているから本を少し読むのだが、今度は眠すぎて全然読めなくなっている。結局、読書を頑張ろうと思っているのに、一日に数ページ読むのがやっとで、しかも内容があまり頭に入って来ないのだ。僕はもうダメかもしれない。

 すみません、どうしたら頭がよくなるのでしょうか?

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ただ面倒なだけだった

 最近本を読む時間が増えた。と言っても眠くなって、居眠りしながら読んでいるから一日に数ページしか読めていない。あまり効率よく読んでいるとは言えない。こうして無駄に読書に時間を割いているから、読書以外にかける時間が減ってしまった。特に運動を全くしなくなった。筋肉は落ち、食べてばかりいるから太ってしまった。
 一瞬で痩せたいと思ったので、15kgのダンベルを持ったら心臓が異常な速さで脈打ち、倒れそうになった。脳血管も破裂しそうだった(そんな気がした)。数グラムは痩せたかもしれない。しかし肉体は確実に衰えている。今は文庫本を支えるだけで精一杯なのだ。

 ダンベルはもう処分しようと思っている。部屋に置いてあるだけで、全く使っていない。妻に邪魔だと言われ続けている。だが、こんなに重いものをどうやって処分するのだろう?マンションのゴミ置き場に置いておけばいいのかな?重くて持っていくことは不可能だ。腰を痛めてしまう。調べてみると無料回収してくれるところがあるようだ。近いうちに依頼してみようか。でも、回収業者には2013年新年早々ぼったくられて以来、怖くて連絡できずにいる。あの時はジャンクのノートPCと布団を回収してもらうだけで2万円近く持っていかれた。玄関先でその値段を言われた時、僕は唖然とした。断ればいいものを、あまりの断りづらさに承諾してしまい、財布の中身が空っぽになってしまった。泣きそうになった。ダンベルのことはどうにかしないといけないなあ・・・まだ使うかもしれないから持っておく、という甘っちょろい考え方は捨てて、ダンベルも捨てちまおう・・・

 読書で思い出した。一万ページを数秒で読む能力でなく、一万ページを数秒でめくることができるかどうかを検証しようと思っていたのだった。ところが、一万ページ分の本を持ち上げるだけの筋力が僕にはないことに気付いたので、諦めることにした(1万ページを計算して本を並べるのも面倒だし)。大体想像できるけれど、数秒で1万ページを1ページずつちゃんとめくることなんて無理に決まってるんだ。

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落丁本

 夕方になってやっと外に出た。雨は止んでいたが、傘を持って行くことにした。運が悪いから、一歩家を出た瞬間に土砂降りにならないとも限らない。一階の駐車場を抜け、道に出た。すぐ近くの公園から作業員たちが清掃を終えて引き上げて行くところだった。辺りは薄暗かった。ほとんど陽は没してしまい、残りの寂しい陽光を陰湿な雲が遮断していた。踏み出す一歩一歩が暗さを助長していく。
 二人のサラリーマンがゆっくりと何かを話しながら歩いていた。二人を追い越し、踏切を渡った。濡れたアスファルトに堅いゴム底のスニーカーのコツコツという感覚が足裏に伝わって来た。アウトレットのセールで買ったスニーカーだ。長いこと履いているが、実に安っぽい。いつかもっといい靴を買ってやろうと思っていたが、なかなか買えずにいる。
 いつも昼間しか営業していない小さなパン屋を通り越し、小さな川に架かる小さな橋を渡った。人とすれ違い、人を追い越して行った。時折狭い道に入ってくる車に気を付けながら、商店街に出た。あまり繁盛しているようには見えない商店街を歩いていると二人の外国人が自転車に乗って通り過ぎて行った。彼らはモルモン教徒だった。この前、僕を呼びとめた人たちであるかどうかはわからない。とにかく彼らは敬虔なモルモン教徒だ。ユタ州から来たのかもしれない。こんな雨の日でもモルモンの教えを広めようとあちこちを自転車で走り回っているのだろう。あの時彼らにもらったモルモン書を未だに読んでいない。
 商店街の中心辺りに位置する郵便ポストに封筒を投函した。くるりと後を振り返り、家路についた。洋楽専門の店を通り、バーを通り、スナックを通り過ぎた。すべて僕の知らない世界だ。テントを張っただけの八百屋、入ったこともない文房具屋、そして小さな川に架かる小さな橋に舞い戻った。橋を渡ったところは以前、あのモルモン二人組に声を掛けられた場所だった。二人のモルモンと話した場所を過ぎ、パン屋を過ぎ、踏切を渡った。速足で登ると下肢が引き裂かれそうになるほどの負荷のかかる坂道を上り、家に戻った。
 家の中は暗かった。家を出る時と変わらず、猫がコタツの中で寝ていた。しばらくパソコンのモニターを眺めていた。妻から電話がかかって来てから、夕食の支度を始めた。

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発作

 仕事中に脳血管がドクドクと脈打ってたまらなかった。仕事もちゃんとできていたのかよく覚えていない。いや、多分全然ダメだったけれど、もう爆発しそうで、嫌になって帰って来たのだ。もしかするとミスっているかもしれない。クソ喰らえだ!
 更衣室で着替えている時にロキソニンを1錠飲んだ。そのまま電車に乗ると益々悪化するから。この前も同じように頭を抱えて電車に乗っことがあったけれど余計に酷くなったのだ。帰って来て、しばらくは寝たきりになってしまった。だから、今日は電車に乗る前に薬を飲んでおくことにした。電車というのはあまり体によくないのだろう。
 薬を飲んだ甲斐があり、電車を降りる頃には僕の悩みは消えていた。それよりも僕は電車内で気になる事があって、痛みなど忘れていた。僕は車窓から外を眺めていた。日が没していたため、明かりのない場所を通過する際には車窓には社内のボックス席が映っていた。そこにはスマホを見ながらニヤニヤしている人物が座っていた。僕はその人をじっと見ていた。そして、スカイプで友人に「スマホを見て、ひとりでニヤニヤしている人がいる」とメッセージを送った。僕はメッセージを送りながら、一人でニヤニヤしていた。変な人だと思われたかもしれない。

 最近、仕事中に気分が悪くなることが多くなった。ストレスのせいなのだろうか。あまり仕事に行きたくないな。

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腰を深く落として

 8時に起きてから、正午を迎えるまでの間、ずっと眠気を引きずっていた。コタツでじっとして、パソコンの画面を眺めたり、本をめくったりしていた。猫も僕の眠気に引き込まれたためか、座椅子にもたれるようにして座っていた僕のお腹の上で眠り始めた。時折「ずー」というようなイビキをかいていた。最近、眠くて仕方ない。できれば規則正しい生活を送りたい。夜勤がなくて、朝9時から午後15時までの肉体的に負担のない仕事をして過ごしたいと僕は常々夢見ている。

 12時になった時、まずは掃除をしようと決めて、動き出した。片付けをして掃除機を掛けた。そこで勢いがついた。シンクには洗い物が溜まっていた。イヤホンをつけ、メタルを流しながら、その早いリズムに乗って、皿洗いをした。曲のリズムに乗せて、洗うペースを狂ったように上げて行く。皿が手から滑り落ちそうになるくらい。誰かが覗き見していたとしたら、この人は一人で何をやっているんだろうと訝しがるだろう。僕はリズムに乗っていた。皿を洗い終えた勢いで米を研ぎ、炊飯器のスイッチを押した。浴室に行き、浴槽を洗った。キッチンに戻り、昼食を作ることにした。午前中の僕は昼食を作るつもりはなかった。昼過ぎに妻が仕事を終えて帰って来る。雨が降っているから洗濯物をコインランドリーに持ち込む予定になっていた。そのついでに外食でもしようと怠けた考えを持っていたのだ。掃除で体も温まり、皿洗いでリズムに乗っていたので、そのままの勢いで食事つくりに突入した。

 冷蔵庫の野菜室を確認すると、そこには人参しか入っていなかった。食品棚に玉ねぎとジャガイモとコーン缶があった。シチューのルウがあったので、シチューを作ることにした。だが、肉がなかった。肉がないと寂しい気がした。代わりにウインナーを使うことにした。
 食材を刻み、火にかけ、ルウを入れる段になって、牛乳がないことに気付き「しまったー」と悲鳴を上げた。牛乳なしで食べることも考えたが、どういう味になるのかは知らなかった。妻が仕事を終え、電話をかけてきたので、牛乳を買ってきてもらうことにした。妻が買ってきた牛乳を入れ、数分でシチューが出来上がった。コーン缶のコーンはどこか多い気がして、僕は妻に「もろこし全部入れてもいいかな」と訊いた。「もろこしって」と妻は冷笑してどこかに行ってしまった。もろこしはもろこしじゃないのか?これは地方の言葉かもしれない。「シチューにウインナーって」と後でまた妻は僕を嘲笑するように言ったので落ち込んだ。

 夜は速読について考えた。1万ページを数秒で読む能力というやつを。1万ページを数秒で読むには1ページを限りなく0秒に近い時間で読み終えなければならない。9秒で読むとしたら1ページを0.0009秒だ。たとえ読むことが可能だとしても、1万ページをめくる速度の方が問題になってくる。それについていくら想像しても、うまくイメージが掴めなかった。確たるイメージがないと、絵は描けない。友人は腰を深く落とし、太極拳のような動作で並べた本のページをめくってゆく、とふざけた説明をしていた。実際にその真似をしていたが、なぜか目線は手元ではなく、どこか別のここではない場所を見ていた。1万ページを数秒で読む(ページをめくる)ことが可能なのかどうかを確かめるために、次の休日に1万ページ分の本を並べ、腰を深く落とし、太極拳のような動作でページをめくり、ストップウォッチでその時間を計測してみようと思っている。たった今考えたことだから、今から始めると怒られそうなので、次の休日にゆっくりとその検証に入りたい(バカバカしいし、忘れてやらないかもしれない)。

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M/Tと都会のフシギな企業

「すみません、本日からこちらで働かせていただくことになりました、Tと申します」

 Tは新たな扉を叩いた。この道しかない。再出発だ。8時45分にオフィスの前の受付に到着すると、新しい職場、新しい空気に満たされながら、内線の向こうの女性に名を名乗った。この扉の向こうには新生活が詰め込まれている。

「T様ですね、お待ちください」と受付の電話の向こうで女性の声がそう言った。内線が切れてから10分ほど経過したが、待合室には誰も出てこなかった。何か手違いがあったのだろうか。お待ちください、と言われた以上待つ以外に手はない気がした。再び内線で管理部に電話することも考えたが、しつこい男はモテない事はわかり切っていた。日本の侍のように忍耐強く待つしかない。しかし、誰も出てこないな。Tは冷や汗が背中に伝うのを感じたが、とにかく忍耐を決めた。

 Mのデスクとは同列に位置しているにも拘わらず、わざわざ向い側のデスクを通り越し、一番離れたオフィスの入口付近にまで一旦遠のいてから、Mのところへやって来た猫背の女性社員が内線で受けた旨を伝えた。訝しげに。

「え、え?働きに来た?確かに働くって言ったのかい?知らないな。それとも面接の予定とかあったかな。なかったと思うんだけどな。君、ちょっくらその男の様子を見て来てくれないかな?」Mも首を傾げた。パソコンでスケジューラを参照しても、本日中に面接もなかったし、来客もないことは確認できた。そもそも確認する必要なんてない。スケジュールはすべてMの頭の中で管理されていたからだ。にも拘わらず、思わぬ来客があったことはMを一瞬戸惑わせた。自分のミスだろうかと思ったが、そんなはずはないとすぐに思い直した。おそらく、不審者か何かだろう。

 オフィスから女性社員が出てきたのを認めた。Tは「待ってました!」と小声で言ってしまってから、「しまったー」と言い、それらの言葉がすべて女性社員には聞こえぬほどの小さな悲鳴だったことに半ば助けられつつも、恥ずかしくて顔を赤らめていた。すぐに気を取り直し、「すみません、本日よりこちらで働かせていただく、Tと申します!」と希望に満ち溢れた気持ちを言葉に表した。新たな職場、見知らぬ女性社員。これから仲良くなるかもしれない。
 猫背はTを目の前にして、言葉に詰まった。Tは顔ばかりでなく、耳や額から頭頂部にかけての薄くなったところまでを真っ赤にして立っていた。

「その・・・本日から働かれる方ですか?担当の者の名前を教えていただけますか?」
「え、えーと、内線で管理部に電話をかけて下さいと言われただけでして。申し訳ありません。担当者の方のお名前を聞き忘れてしまいました」Tは初日から自分が失敗してしまったことに気付いた。本当は内線で管理部にかけてくれなどと言われてもいない。面接があり、採用通知があった。そして今日から来てくれとだけ連絡があった。担当者の名前など一切聞いていない。面接官だった人には名刺も貰っていないし、名も聞いていなかった。しかし、変だな、こちらは名乗ったのに、あちらさんは名乗るどころか、むっつりと黙り込み、こちらがほとんど一方的に話していた面接だったな。よく採用されたものだ。
 猫背の女性社員はどこかに行ってしまった。猫背が黙っていなくなってしまい、Tは狼狽えて後ずさった。待合室の四角いソファーに躓き倒れ込んでしまったが、冷静を装って、自らの意思でそこに座ったのだと言う風に口をすぼめ、そのまま待つことにした。

「Mさん、やはり今日から働くつもりで来たらしいです。でも、どこか挙動不審で、顔が真っ赤なんです。担当者の名前も知らないそうです。おかしくないですか?」猫背は言った。
「おかしいね。何か勘違いされているんじゃあないかい?誰かを採用したなんていう話は出てないんだけどな」そう言って、Mはふと心当たりに思い当たり、右の方を顔の向きを変えずに横目で確認した。隣のデスクは空席だった。その隣のデスクには上司が座っていた。上司は黙り込んでいたが、口を開けて、パソコンのモニターを見て伸びをしていた。開けた口で呼吸をしており、無意味に荒かった。Mはその呼吸が好きではなかった。呼吸音が常に耳に届き、Mは意志とは無関係に自分の首が意図しない方向へと引っ張られる感覚に日々悩まされていたからだ。耳障りだ、とMはいっつも思っていた。猫背も同様だった。隣の席の上司の口呼吸が嫌で、猫背は机の上に本来床に置くはずの空気清浄器を乗せて、その唸りで呼吸音を掻き消し、上司の視線から身を隠すのだった。
「俺が行ってくる」Mは席を立ち、オフィスを出て行った。猫背は再び遠回りして自席に戻って行った。

 Mが席を立ったのは気分転換のためでもあった。また、あの首を引っ張られる発作のようなものが襲ってくる前にどこかへ行ってしまいたい。Mはそう思っていた。どこの誰かは定かではないが、今日のところは部外者に助けられた。
 Mが受付に行くと、頭髪が薄くなったTが腰かけていた。本当にいた、とMは思った。Mは息抜きに出てきたのであって、Tのことなど席を立った瞬間に頭の隅に追いやって半ば忘れていた。冗談ではなく、そうなってしまうのが必然と思われるほど、Mは気分が優れなかったのだ。「今日からここで働かれるという方ですか?」
「おはようございます」Tはまず挨拶した。一呼吸置いてから「本日よりこちらで働かせていただくことになりました、Tと申します!」とTは心の中で何度も何度も繰り返し練習した言葉を、わずかに表情をゆがめながら発した。よし、初対面で笑顔であいさつできたぞ、とTは思った。それにしてもヤクザのような服装をしているな、とTはMの風貌を見て思った。
 Tが満面の笑みを浮かべ、自らの表情を"上出来"と評価するのに反して「この人はなぜ疲労感を滲ませた悲しそうな表情をしているのだろう」とMは感じた。
「こちらへどうぞ」MはそういうとTを空いている会議室へと案内した。

「こんなことを訊くのも変な話だとわかっていますが、Tさん、あなたは今日ここに何をしにいらしたのですか?」Mは言った。
 Tは胸につかえるものがあって、言葉が出てこなかった。みるみるうちに赤くなっていくTの目を見て、Mは狼狽した。「えーと、その大丈夫ですか?」
「すみません。私はここに何をしに来たのでしょう!ここは私を採用してくれた会社ではないのかなあ!」Tは顔も耳も頭皮も真っ赤にして叫ぶように言った。
「そうですね。まずは落ち着いて話しましょうか。何かこちらに不手際があったようです」とMは推測ではあるが、こちら側に非があることを読み取った。「Tさん、あなたの面接を担当した者のことを教えてほしいんです。名前はわからないんですよね?」Mが聴くと、Tは「そうだ」と言った。「上を見てください。あそこに通気口のようなものがあります。そこからオフィスが覗き込めるようになっているんですよ。あの位置からは管理部のデスクが見えるんです。いや、この前掃除をしていて気付いたのであって、何かしようと思って覗いたんじゃあないですよ。とにかく、この椅子に登って見てみましょう」
 MとTは並べた椅子に乗って通気口からオフィスを眺め降ろした。オフィスからは澱んだ空気が会議室側へと流れ込んで来ていた。Mはまたしても首を引っ張られる感覚に襲われた。オフィスの方へと首を異常な強さで引っ張られる。Tはオフィスの異様な空気に吐き気を覚えた。あまりいい空気ではないな。働く前に換気をしよう。もし働かせてもらえるのなら。Tはそう思った。
「あの奥の机の上に空気清浄器を乗せた女性は見えますか?あのデスクがあるグループが管理部ですよ」とMが言った。間もなく「ああ!あい、い、いや、あの方です。こちらから見て空気清浄器のデスクの右隣りの人です」とTは言った。
「なるほど!やはり!」とMは、体を投げ出すようにして口を開け、モニターを凝視する上司を認めた。

『ずっと伸びをして、スーハー言って、一体彼は何の仕事をしてるのか、さっぱり分からん。周りの人とも一言も口を聞かないし言葉すら発さない。スーハー言ってるだけだ。もしかしたら、彼はあまり仕事をしていないのかな。俺以上に。いや、俺は仕事をしているんだ。仕事が早いから時間がたくさん使えるんだ。彼は遅い。遅いどころか行動すらしないんだ。そんな態度だから誰から好かれないし、尊敬もされないよなあ。彼はもうダメかもしれない』とMは思った。

「Tさん、もうすぐお昼です。これから一緒に昼食に出ましょう。この辺りには安くてお得な定食屋があるんですよ。昼食が済んだら、Tさんのデスクをちゃんと用意します。申し訳ないが、一緒に手伝ってください。ある程度はご自分で好きな備品をお選びいただいて構いませんから」とMは言った。
「ありがとうございます。今日からよろしくお願いいたします」Tは頬を手の甲で拭って、Mの後に続いた。



 この記事は共著である。『』部は友人に文章を考えていただいた。友人には深く感謝する。

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また来た

 ネットで調べた通り、前の入居者宛ての年賀状8通と『転居済』と赤字で書いた別紙を輪ゴムでまとめて、投函した。数日経った。僕の家のポストには8通の年賀状が舞い戻って来ていた。何か手違いがあったのか、何かの陰謀によるものなのかは定かではない。再び投函しようと思っていたが、今日も忘れてしまっていた。郵便局に持ち込もうと思っているが、ちょっと遠いんだ。

 昨日はハンバーグのチェーン店で夕食を食べた。ドリンクバーで飲み物をとりに行くと足裏に違和感を覚えた。席に戻り、靴の裏を見ると、結構な量のご飯粒が踏み潰されて、べっとりと付着していた。僕は爪楊枝を持って、トイレに入った。

 最近、左の耳の中がごそごそと鳴っている。耳掃除を怠ったせいかもしれない。虫が入居したからかもしれない。それともこれは何かの陰謀か。とにかく気持ちが悪いので、ひたすら耳掃除をするのだが、そのゴソゴソという異音は鳴り止まない。左耳を下に向けて頭を振っていたら、ムチ打ちのようになって首が回らなくなってしまった。妻にちょっと見てほしいと頼んだ。妻が指でぐっとこめかみの辺りを思い切り押してきたので、僕は悲鳴を上げた。痛い、ちゃんとしてよ、とお願いしている側の僕が文句を言うのもおかしな話だが、本当に激痛が走ったのだ。耳の穴の中をチェックした妻は「毛だらけやんか」とだけ言って、どこかに行ってしまった。僕の耳の中は虫の住処でもなく、耳垢で栓がされている訳でもなかった。ただ、僕は次第次第に体毛に支配されているらしかった。それなのに、肝心な頭髪は失われてしまっている。世の中には理不尽なことが溢れ返っている。

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寝坊するのは久しぶりだった

 昨日、僕は何かを書こうと思っていた。でも、とくに何もせずに過ごしていた。一日中家にいた。居眠りして、ぼんやりして、寒いので風呂に入ったり、本を読んだりして過ごしていた。どこかに出かけもせずに。夕方になって重い腰を持ち上げて、部屋の掃除をした。家の玄関にいつまでも置かれている段ボール箱(猫が齧って無残な姿になり果てている)を運動がてら手で千切ってゴミ袋に入れた。夜になってフォークナーの『サンクチュアリ』を読み始めたが、ほどなくして眠ってしまった。午前中に読んでいた短編集の感想をブログに書こうと思っていたのだが、僕は読書感想文が酷く苦手なことに気付いてやめたのだった。そこで何も出て来なくて、困ってしまった。困りながら、指を動かしていると『机上の空気清浄器』というタイトルで何らかの文章を書いた。一旦は更新した記事を『彼はもうダメかもしれない』という題に変えた。僕はもうダメかもしれない。
 今朝は6時に目覚ましを掛けて寝ていたが、起きたのは6時45分の妻のかけたアラームの音でだった。僕のスマホのアラームの音量がほとんど聴こえないレベルにまで下げられており(誰が下げたんだろう、これは陰謀かもしれない)、6時にちゃんと鳴っていたと思うのだが、僕は全く気付かなかった。

「6時に起きるつもりだったけど、6時45分の君のアラームで起きたんだ」

 僕はこのセリフを朝と夜に一回ずつ妻に言った。夜に言った際には「朝も聞いたよ」と言われた。「知ってるよ」と僕は言った。あえて二回言ったのだ。寝坊したのは本当に久しぶりのことだったのだ。

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彼はもうダメかもしれない

 彼は出勤してきた若い女性社員にちらっと目をやり、パソコンのモニターに目を落とした。若い女性社員は自分を尊敬しており、またおそらくは愛してくれているのだ、と彼は思いこんでいた。けれど若い女性社員はいつになっても彼のもとへは来なかった。控えめな性格なのだろう、と彼は思った。自分はいつでも待っているのだから、遠慮はいらないのになあ。ふと若い女性社員が席を立つのを見て、彼は気付いた。彼女はいつもより丁寧に化粧をしており、服装もいつもより気を遣っている風だった。あれは地方には置いてないだろうな、と彼は思った。きれいだ。
 ・・・・
 定時を過ぎた時、彼は胸躍らせて、女性社員の方を見た。彼女は周りの同僚たちに挨拶をして、オフィスを後にしたのだった。なぜ帰ってしまったのか、彼には理解できなかった。彼は顔が熱くなってくるのを感じた。鼻でなく、口で呼吸するのが彼の癖だったが、その呼吸が早くなっていくのが自分でもわかった。口の中がねばねばとして、気分が悪くなって来た。彼は落ち着こうと自分に言い聞かせた。しかし、なぜ帰った?今日はバレンタインデーだろう!
 彼の隣のデスクはなぜか空席で、その隣に二つか三つ年下の男性社員が座っていた。数年前から俺の部下になった男だが仕事そっちのけで遊んでばかりいるみたいだ。特に昼休みなんて俺の2倍も休んでいる、俺より先に昼飯に出かけて、戻って来るのも俺より遅いんだ。仕事ができない訳じゃないがもう少し仕事に時間を費やしてもいいのではないか、と彼は部下を評価していた。よく見るとその部下もいつもと違う、かなり高そうな服装をしていた。あれはバーバリーかもしれない。いや、そうに違いない。俺は洋服には詳しくないが、推測が間違っていたことなどないのだ。しかし、奴はこれからデートだな。いつもはヤクザのような服装をしている癖に!
 部下は「お先に失礼します」とぶっきらぼうに言うと帰って行った。
 なぜヤツは上司である俺より先に帰るのだ。ありえない。彼は部下がドアの向こうに消えるまで後ろ姿を見つめ続けた。とうとう戻って来なかった!しかし、いつ見てもやけに顔色の悪い奴だ。体調管理がなっていないのだろう。
 その日、多くの社員は早々に仕事を切り上げて退社して行った。特別急ぎの仕事はないのだ。残っている社員は不出来な追い詰められた社員ばかりだった。でも自分は違う、と彼は思った。俺は仕事ができるし、今もやるべき仕事があるから残っているのだ。確かに彼のデスクの上には書類が積み上げられていた。この書類の中から必要な書類を明日の会議までに見つけ出さなければならない。重要な仕事だ。
 しかし、なぜ彼女は俺に何も言わずに帰って行ったのだ。彼は納得しなかった。今日はバレンタインデーだというのにおかしな話だ。これからデートに行くといった服装なのに、なぜ先に帰ってしまったのだろう。それにあの部下だ。あいつは俺に無愛想な挨拶だけで帰って行きやがった。仕事の報告を一切していかなかった。俺はあいつに何一つ伝える義理はないし、それを察するのが部下の仕事だ。しかし、あいつは俺に毎日仕事の報告を上げて来なければおかしいじゃないか。ヤクザめ!
 
 気付くと右隣のデスクに入社二年目の女性社員が残っていた。デスクに大きな荷物が載っており、女性社員は前かがみの姿勢だったため、その物陰に隠れて気付かなかったのだ。彼が猫背の女性社員の方を向くと、デスクの上の大きな荷物が唸り声を上げた。彼は表情は変えなかったが、誰にも気づかれない程度に後にのけ反り、誰にも聞こえない程度の悲鳴を上げた。その瞬間、デスクの上の荷物はさらに大きく唸った。その唸りに合わせるように、猫背の女性社員は益々前傾姿勢になり、荷物の物陰に隠れてしまった。彼からは女性の腰から尻に掛けてのラインが見えるのみだった。彼はなかなか魅力的な腰のラインだと思った。彼女はシャイなのかもしれない。俺がいつまでも仕事をしているから、なかなか声を掛けられずにいるのかもしれない。遠慮はしなくていいのに。
 しかし、なぜこの女性社員はデスクの上にこんなにデカい空気清浄器など乗っけているのだろう。彼は疑問に思った。おそらく、喉が弱いのだろう。何らかのアレルギーもあるかもしれない。きっとそうだ。そうに違いない。体調管理をしっかりしているな。使用方法はわかっていないみたいだが。よし、次に話しかけられたら、それは床に置くものだと伝えよう。それにしても、あのヤクザな部下とは大違いだ。奴は体調管理がなっていないから、いつも顔色が悪いし、首を変な方向に向けて、まるで意志とは無関係にその方向に引っ張られでもするかのように苦しそうにやっているんだ。
 猫背の女性社員は彼に好印象を与えた。もしかすると、この子は俺が好きなのかもしれない。俺はいつだって構わないんだがなあ。彼がそう思っているうちに猫背は急に立ち上がった。顔が真っ赤だった。デスク上の空気清浄器が唸り続けている。猫背の彼女は空気清浄器に共鳴でもしたかのように激しく咳き込みながら、彼に形だけの挨拶をして、バッグを持って歩き始めた。

「待ちたまえ!」彼は言ったつもりだったが、彼女には聞こえないようだった。空気清浄器が唸って、猫背のデスクを震わせ続けた。彼は唖然として女性社員の猫背の背中から腰に掛けてのラインを、その姿が消えるまで見つめていた。そのラインは彼の気に入った。

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昏睡

 昨日の事を書こうと思う。

 ぷつりぷつりと意識が途切れた。夜勤明けだった。帰宅した後、シャワーで十数時間の労働の汗とニオイとストレスの数パーセントを洗い流した。いつもならシャワーを終えるとパジャマに着替え、食事を摂った後に眠るのだが、この日は洋服を着て、妻と宗像の方へと出かけたのだった。洋服を着て、と当たり前のことを書いてしまった。全裸で行くはずがないのに。

 宗像大社に行き、おみくじを引いた。小吉だった。まあまあだと思う。太宰府天満宮では末吉、宗像大社の小吉。新年早々大吉を引いて運を使ってしまうよりはずっといい結果だと僕は思った。商売は売買共に利益あり、相場は売り時としてはよしと書かれていた。意味はよくわからない。売っても買っても得をして、もし売る物があったとしたら今が売り時だと言いたいのだろう。何か売る物があったら、今日か明日売ろうかな。今日と明日は休みだから。でも、今日はもう15時を過ぎてしまって、日も暮れて来たので、売る物があっても売ることができないだろう。いや、出かける気力がないという意味であって、15時にどこの店も閉まっているからと言っているんじゃない。ただ、15時以降というのは僕の行動力を酷く低下させてしまうのだ。

 妻が「道の駅でご飯を食べよう」と言って、なぜか宗像大社の駐車場からいきなり歩き始めた。「ほら、あそこに道の駅がある」と言って妻は歩き出す。僕もそれに続く。妻が道の駅と言った建物を見て「あれは道の駅じゃなくて、海の道って書いてあるよ」と僕が言った。妻は「道の駅だと思ってた」と不思議そうに言った。確かにそこには『海の道』と書かれた建物があった。どういった施設なのかわからないけれど、何かを展示しているスペースが見えた。
 宗像大社の駐車場を出るとき、「左の方へ行ってみようよ、海沿いだから、何か食べるところがあるかもしれない」と僕は当てずっぽうで言ってみた。妻が車を走らせる。少し進むと『道の駅』の看板が見えた。今度は本当の道の駅だ。
 道の駅の食堂で食事をした。その後、パン工房でパンを買って、車の中で食べた。何もかもが美味かった。パン工房で買った米粉パンはもっちりしていてとてもうまかったので、車の中で食べた後に、再び戻って買い増しした。家に帰って、夕食前に食べてしまったほどだ。

 途中から記憶がない。寝ていたのだ。気付くと家の駐車場で妻が僕の肩を叩いていた。家に入り、コタツに当たっているとまた眠ってしまった。気付くと妻が夕食を用意してくれていた。昨日は本当に意識がぷつぷつと切れる日だった。

 今日も眠い。休みの日の昼間は眠気が強い。夢を見ていた。ふと気づくとコタツで本を開いたまま眠っていたのだった。ちょっと体の調子がおかしなことになっている。

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僕以外のものが無限に静止する

 勤務中、だんだん頭が痛くなってきた。室内が暑いせいかもしれない。睡眠不足だからかもしれない。水分をあまり摂取できなかったせいかもしれない。ストレスが凄まじかったからかもしれない。とにかく、途中から気分が悪くなってきて、最後の方はもう仕事なんてどうでもよくなっていた。退勤後、TSUTAYAでCDを借りて来ようと思っていたが、頭痛がひどいので諦めた。帰りの電車の中で吐き気がした。「僕、死ぬのかな」などと思い、座りたいけど、席が空いてないために座れなかった。乗車時間は15分程度だったが、途方もなく長い時間の中に閉じ込められたような気がした。いつまで経っても次の駅にすら辿り着かない。電車の進行は無限に分割されてしまい、次の駅どころか、数メートル先にさえ辿り着けないような、そんな重く苦しい走行を続けていた。そこには速度なんてない気がした。まるで何かのパラドックスにハマり込んでしまったかのように、列車は無限に静止しているように思えた。列車の無限の静止に合わせて、吐き気も無限に続くのだった。僕は列車の床に臥し、白骨化した。
 でも、実際には電車は目的地に到着した。帰宅して、頭痛薬を飲んで、倒れるように床に寝転んだ。猫はベッドで寝ていて、僕は床に寝ていた。死体のように寝ていた。

 先日、スカイプで友人と話した。豪邸の話になった。友人が数億円の豪邸を建てた後、僕を家に招いてくれる。僕は友人宅を訪れる。インターホンを鳴らすのだが、友人は出てこない。おかしいな、と思ってドアノブを回してみると、それは簡単に回り、ドアが開いた。僕は黙って家に上がり込む。いや、「お邪魔します」と言うかもしれない。とにかく、友人に招かれたのだから、僕には家に上がり込む権利があるのだ。家に上がるのだが、家具調度品は一切置かれていない。何もない。家中探し回って、なぜか最後に一番人がいそうなリビングに辿り着く。リビングの床には友人が寝ている。「ここにいたのかい?」と話しかける。しかし、返事はない。体を揺さぶるが、返事はない。彼はミイラ化していた。ここまで話した時、「誰が招いたんだよ」と実際にはミイラ化していない現実の友人はスカイプで僕に問いかけた。招いたのは友人には違いない。ただ、僕が招かれてから友人宅を訪れるまでの数日の間に、友人はミイラ化してしまった。僕が電車内で白骨化したように、彼は数億円の豪邸内でミイラ化してしまったのだ。自分以外の何かが無限に静止するものだから、僕らはあっという間に白骨化もしくはミイラ化した遺体または死体になってしまったのだ。

 兎にも角にも僕は今日体調が悪かった。

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大切な話かもしれない、一方的かもしれないが

 『All Along The Watchtower』の動画を見ていた。レニー・クラヴィッツが唄い、エリック・クラプトンがギターを弾いていた。別の動画ではジミ・ヘンドリックスが唄っていた。音楽を聴きながら、日中ぼんやりと過ごすのが至福の時だった。昨年、今の家に引っ越して来た日のことを思い出した。午前中に引っ越しの荷物を運びこんで、午後はボブ・ディランのライブに行ったのだった。そこでボブ・ディランは『All Alomg The Watchatower』を唄っていた。観客たちは盛り上がっていた。

 観客の中には車椅子の方がいて、介護者が付き添っていた。介護者がかなり傲慢な態度で、周囲の客を突き飛ばすとは言わずとも、強く押していたのを思い出す。介護者の女性は他の客を肘で押し、車椅子の男性は僕の妻の尻を触っていた。僕は不快な表情をして訴えかける妻の場所を移動させ、事の成り行きを見守った。介護者と周りの客が口論を始めていた。
 会場にはちゃんと車椅子の方の席が用意されていたと聴く。スタッフは事前に説明していた。にも拘わらず、「モトリー・クルーの時はちゃんと前列の真ん中に席を確保してくれた!」等々介護者がスタッフに詰め寄っていた。スタッフが「他のお客様もちゃんとチケットをとって、並んで頂いておりますので(お客様だけ真ん中にご案内する訳にはいかない)」としっかり説明していた。だが、介護者は納得していないようだった。かなりしつこくスタッフに言っていた。
 周りの客は押されて迷惑しているのに介護者の後に障害者がいるから、強く言えないようだった。「あまり押さないでください」と言っていたが、どことなく遠慮していた。介護者は「あなたたちがこっちに押してくるから」と強く主張していたが、見ている限り介護者が一方的に押して、前へ前へと出ようとしていた。
 僕は「何なんだよ。みんな並んでるんだよ。後から来て何言ってるんだ。誰だって真ん中の前列で神様を拝みたいんだよ!車椅子がどうしたんだ?車椅子の席が用意されているのはスタッフが説明しただろ?聴こえなかったのか?あんた納得してここにいるんじゃあないのか?だったらさあ、黙ってこの曲を聴けよ」と言いたい気がして(言ってはいない)、妻の体を触られたこともあって内心腹立たしかった。介護者は肘で他の客を押し込みながら、自分が見える位置に行こうとしているように見えた。車椅子の男性のことをあまり見ていない。男性が僕の妻の体に触っていることにも気づいていない。
 弱い立場を利用しているようにしか見えなかった。おそらく大変苦労されてきたのだろうとは思う。自分たちが社会的に優位に立てず、歯がゆい思いをされて来たことだろう。痛いほどそういう経験をされたのだろう。だから、社会に向ける考え方が歪んでしまったのだろう。僕は歪んでいると思う。だってそうじゃないか?車椅子だから他の苦労して並んだ人より優先されて一番見やすい位置に行って良い、というのはおかしいと思う(そもそも車椅子の方の席がちゃんと用意されているのに)。みんな日頃汗水垂らして働いて、結構高いチケットをとったのだ(僕にとっては本当に高かった。今までで一番高いチケットだった。クソの処理をして、罵倒されながらも笑顔を崩さず手に入れた神様のチケットだ)。みんな楽しみにしていたのだ。
 もし介助者が車椅子の男性のことを思っていたとしたら、車椅子の方のために用意された席に移ってもよかったんじゃないかと思う。だって、他のお客さんたちに囲まれていたら、車椅子の方の目線からでは、ボブ・ディランは一切見えなかったはずだからだ。見える訳がない。僕でさえ、ベリートーラーズ(190cmほどある男たち)に囲まれて、あまり見えなかったのだから。見える見えない以前に、安全を確保するのも介護者の役目ではないのか?観客たちが波のように動くホールで接触等があって、事故に繋がったとしたら、どうするつもりだろう。しつこく言うけど、車椅子の方のための席であれば、そういった危機管理が行き届いているから、安全にライブに集中できるはずなのだ。息子さんか誰なのか知らないが、楽しませてやりたいと思う気持ちはわかる。必死になっていたのだろうと思うけど、介護者の方には、もうちょっと考えてほしかった。色々な意味で視野が狭いと思った。あるいは僕の考え方が偏りすぎているのかな。
 
 今更という感じだけど、これは昨年4月のことだ。まさか『All Along The Watchtower』がこの記憶を呼び起こすとは思わなかった。しかし、当時僕は怒っていた。一方的に偏った怒りの感情で、その物事について語るのはどうだろうと思っていたし、せっかく楽しい場なのに怒って帰って来たなんて書きたくなかったので、当時のブログでは触れていないと思う。しかし、僕は根に持つタイプだから、こういうことは忘れないし、いつか書こうと思っていた。昨年の春のことでした。

 新居に越してきて、初めての新年を迎えた。こんなことは年末にまとめて忘れるべきだったかもしれないが、根に持つタイプの僕は忘れ去ることのできない記憶を呼び起こして、再び怒った。
 集合ポストには年賀状が届いていたが、ほとんどは妻宛てのものと、前の入居者らしき人へのものだったので、僕はまた怒った。友人に聞いた『何かを期待して待ち続けているのに、期待通りにならずに怒りまくっている人』のように怒った。前の入居者は郵便局に転居届をしていないらしい。今日はその年賀状を持って出かけたのに、まだ郵便局が開いていなかったので、仕方なく持ち帰って来た。ネットで調べると、別紙に転居済と赤字で書いてポストへ投函したら、それで手続きしてくれるらしいことがわかったので、そうしようと思っている。もう年賀状が届いて1週間以上経っているので、早めに手続きしなければ。

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年末年始の食生活により

 ビュッフェ形式のレストランに並んでいると次々に割り込みをされた。しかし、新年ということもあり忍耐して、楽しい食事にしたかった。自分の番が来て、皿を手に取ろうとしたが、またしてもモラルのない客たちが次々と押し寄せて、大きな皿をすべて持って行ってしまった。店側も配慮が足りないのか、追いつかないのか、皿の補充を一切しなかった。客を際限なく入店させ続け、店内がパンクするほどにしてしまった店側にも責任はあっただろう。それ以上にモラルに欠けた人々の波は凄まじいものだったが。大きな皿がないので、仕方なく小皿を手にとり、うまそうなチャーハンをそこに盛り付けにかかった。もう席がどこにも空いていないので、僕もモラルを欠いた人々に倣って、その場でチャーハンを食べようとした。すると妻が「行ってくるよ」と言った。妻は仕事に行く服装をしており、僕はベッドに寝ていた。散々並んで、割り込みされた上に、うまそうなチャーハンを味わうことなく現実に引き戻されてしまった。自分の夢なのになぜいいようにならないのか。
 夢とは願望充足のためにあると誰かが言っていた。昔読んだフロイト先生の精神分析入門という本だったか。だったら食べさせてくれよ、と強く思ったのだった。が、よくよく考えてみると僕は正月の食生活のため、胃腸の調子が悪かった。昨夜も夕食はもう食べたくないと言って、にゅうめんを控えめに食べたのだった。食べられないことを恨めしく思ったが、胃腸の調子を考えると、至極当然の夢だったように思う。目覚めて頭脳が明晰さを取り戻すと、はっきりと胃の具合の悪さを感じ、食べたくない気持ちの方が強いことがわかった。

 妻は8日間の休みを終えて、仕事に出かけて行った。僕は今日休みなのだ。今日は胃の調子も悪いし、のんびり過ごすんだ。

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末吉!

 毎日ブログを更新したいと言っておきながら、新年早々2日目にいきなり更新せずに過ごしていた。夜勤中で、ブログを書く余裕がなかった。以前なら、夜勤をしていてもブログを更新する気力があった。今は気力がない。書いたとしても「早く帰りたい」としか言えないので、もう考えずに更新しないことに決めている。と言っているうちに3日が終わってしまった。これで新年早々二日連続で更新できなかった。僕はブログに向いていないのかもしれない。

 今日(昨日だけど)は自宅から徒歩で太宰府天満宮に初詣に行って来た。夜勤を終えて帰宅し、12時から15時まで休んだ。高校サッカーで東福岡を応援した後(残念ながら負けてしまったが)、準備を整えて家を出発したのが17時半だった。太宰府天満宮は正月三が日は24時間開門しており、参拝することができるという。行かない訳にはいかなかった。我が家では2年続けて太宰府で破魔矢を買っており、それを返納するため、そして新たに買うためにぜひとも参拝しなければならないのだ。これが恒例行事として定着しつつある。我々は昨年の破魔矢を持って、家を出発した。

 大晦日のカウントダウンから年明けまでの二年参りの混雑ぶりはまだ目にしたことはないが、おそらく参拝者で境内がすし詰め状態になり、身動きが取れないだろう。しかし、3日の夜ともなるとそれほどの混雑は見られず、時折立ち止まるが、順調に前に進めるまでになっていた。太宰府天満宮へと続く道路は混雑しており、自動車の長い列が続いていた。歩いて行った方が本当に早いのだ。

 太宰府天満宮に到着した僕はカメラを手にあちこちを撮影し、妻とはぐれそうになりながら参道を進んだ。撮影したといっても、どの写真も見られるレベルでなかった。帰宅してPCにデータを移して写真を確認し、僕は泣いた。夜ということもあり、撮影が難しかった。昼間であればカメラ任せに撮影すれば十分きれいな写真が残っただろう。しかし、夜に撮影すると暗くなってしまうので、僕はカメラのシャッタースピードやISO感度を調節しながら撮影していた。その調節は最後まで調節で終わってしまった。あまりにも散々なので、もう僕は不貞寝するしかない。

 天満宮で引いたおみくじは末吉だった。商業のところに僕は注目した。焦ったら損をする、と書かれていた。1日に初心を述べたとおり、今年は損をしないことを目標にしているので、忘れずに精進したいと思う。短気を起こさず、自分を見つめ直し、長い目で見て、物事を判断しなければならない。

 それにしても疲れた。そうか、今日(昨日)は仕事もしたし、初詣にも行った。実に長い一日だった。

 そうそう。太宰府で招き猫とフクロウを買おうということになった。フクロウ(不苦労)はなんでも学力や金運アップに効果があるらしい。180度首が回る(本当にそんなことをしたら我々は死んでしまう)ことから商売がうまくいくとされているようだ。なるほど縁起が良い。買った!



 そして、招き猫は・・・


 家に本物がいたので買わずに帰って来た。ちょっと風水に興味が湧いた今日であった。

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2015年お正月。めでたい!

 昼食は鍋物だったが、正月らしく中に餅を入れて、雑煮風にして食べた。餅なんて随分久しぶりに食べた気がした。あまりにも美味かったので、切り餅を5個も食べてしまった。僕の内蔵は昨日から高濃度のビーフシチューに満たされていたが、次には餅が詰め込まれた。この二日間でかなり体重がアップしたのではないだろうか。

 妻の体調が回復し、午後はコンタクトレンズの洗浄液を買いに行った。帰りにブックオフに行き、本を5冊購入した。今は20%オフのセールをやっているので買い時だ。ディーノ・ブッツァーティという聞いたこともない作家の本を買い、ジャック・ロンドンという聞いたことはあるが読んだことのない作家の本を買った。村上春樹が翻訳したレイモンド・カーヴァーの『僕が電話をかけている場所』という本も買った。読むかどうかもわかないけれど、僕はただ好奇心に任せて本を買った。前年はあまり本を読まなかった。今年はもう少し本を読みたい気がする。

 昨年1月1日にブログを毎日更新したいと書いていたけれど、後半は酷いものだった。元旦に初心を述べておきながら、結局成し遂げることはなかった。元旦に言ったことなど、翌日には忘れてしまった。今、昨年のブログを見て、こんなことを書いていたんだなあ、と他人事のように思った。

 今年も一応初心を表明しておこうと思う。明日にはおそらく忘れてしまっているかもしれないが。

 今年は損しないことを目標にしたいと思う。できたらブログを毎日更新したいが、ブログにばかり縛られて損をするようなことがあったとしたら、目標に反するので、楽しくブログも続けていきたいと思う。そう、大切なことは楽しむことだ。それが一番だと思う。

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たびびと

Author:たびびと
こんにちは、たびびとです。
ようこそ、ぼくのブログへ。

介護職員のバイトをしています。
時間がいっぱいあるので、ブログ始めてみました!

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